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間接依拠とは、二次的著作物(翻案物)を参考にし、その中に現れた原著作物の創作的表現を参考にしたときは、原著作物の表現にも依拠したことになるという考え方です。(三山裕三編「著作権トラブル解決実務ハンドブック」245頁)
著作権侵害訴訟で、被告が、自分が依拠したのは原告著作物の二次的著作物であり、原告著作物には依拠していないなどと主張されることがありますが、そのようなときに「間接依拠」の問題が生じます。
パンシロントリム事件(大阪地判平成11年7月8日・判時1731号116頁)は、以下のように判示し、間接依拠を認めています。

フレッチャー画と原告著作物Cとを比較すると、そこで描写されている男性の姿は、①白黒かカラーか、②左向きか右向きか、③服装が縞模様のパンツ姿か青色のスーツ姿かという違いがあるだけであって、原告著作物Cの特徴である(a)丸い山高帽をかぶった男性が力こぶを出すポーズで立っており、(b)大きく丸い眼球と小さな黒目と、細い眉毛と、顔から鼻頭にかけて直線的な稜線を有することを特徴とする横顔が描かれ、(c)顔から上の部分は真横から見た描写であるのに対し、首から下の部分は斜め前方から見た描写となっており、(d)身体の線が直線的に描かれ、(e)力こぶを出している腕と反対側の腕を曲げて、手にワイングラスを持っている等の点において共通しているから、原告著作物Cの内容及び形式を覚知させるに足るものを再生していることは明らかというべきであり、しかもフレッチャー画が原告著作物Cに依拠して作成されたものであることは前記認定事実のとおりであるから、フレッチャー画は少なくとも原告著作物Cの複製物であると認められる

被告図柄と原告著作物Cに描かれている男性の図柄の間には、前言2の(a)のうち丸い山高帽をかぶった男性が立っている点、(b)及び(c)の点において共通しており、また、別紙目録一(二)(三)の被告図柄については(d)(e)のうち左右の肩から腕、手にかけての線で、さらに同(三)の被告図柄については(a)全部の点で類似しており、そこにはなお原告著作物Cの創作的表現が再生されているものというべきであるから、被告図柄においては右原告著作物Cの内容及び形式を覚知させるに足るものを再生していると認められる。
 そして、先に1で認定した事実からすれば、被告Yは、原告著作物Cの複製物であるフレッチャー画に依拠して被告図柄を作成したものと認められる。
 以上よりすれば、被告図柄は、少なくとも原告著作物Cの二次著作物というべきである。被告は、両者について種々の相違点を指摘するが、それらはいずれも複製物でないことの根拠とはなり得ても、二次著作物性までをも否定する根拠とはなり得ない。
 したがって、被告図柄を被告医薬品の包装箱等に使用した被告の行為は、二次著作物に関する原告の複製権(著作権法二八条、二一条、一一条)を侵害したものというべきである。

「Aが参考にした乙1には、フレッチャー画と共に原告著作物Cが掲載されており、その頁にはフレッチャー画のオリジナルは右原告著作物である旨の説明文もあるのであるから、たとえAが直接参考にしたのがフレッチャー画のみであっても、右原告著作物と類似する被告図柄を作成し、使用するに当たっては、フレッチャー画に関するペンタグラム社の使用許諾のみならず、右原告著作物に関する権利者の使用許諾をも得ることが必要であると気付くことは可能かつ容易であり、そのための措置を講じる注意義務があったというべきである。したがって、それにもかかわらずAは、B社に対し、C社に対する使用許諾を依頼したに過ぎず、原告に対する使用許諾については何ら措置を講じなかったのであるから、Aには過失があるというべきである。」

同人誌などでは、二次創作が広く行われており、原著作物に依拠した複数の二次的著作物が発生しています。そうすると、原著作者(原告)から著作権侵害に基づく訴えを提起された被告は、自分が依拠したのは原告の著作物ではなく、原告の著作物に類似しているかもしれないが、別の著作物に依拠して作成したものであるから、著作権侵害は成立しないなどと反論します。
この被告が主張する「別の著作物」というのが、原告の著作物に依拠して作成された二次的著作物ということならば、やはり原告の著作物に依拠したということになります。


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