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リチャード・ミラーの理論による「合唱のための歌唱法」①

リチャード・ミラーの理論による
合唱のための歌唱法

「よく訓練された船乗りの少年は、複雑な結び目を結び、それらを正しく結べているかどうか判断することができます。しかし、彼はおそらく結び目の結び方を言葉で説明することはできません。」(ギルバート・ライル)


0. はじめに

本記事は、リチャード・ミラーの理論を合唱の発声に活用するために必要な内容をまとめたものです。あらゆる段階のすべての合唱人にとって有益な情報がコンパクトに含まれます。

恐ろしいことに、理にかなっていない発声法からは必ず不具合が生まれます。

リチャード・ミラーの功績は、西洋音楽における声楽教育の歴史の中で伝統的に行われてきた声楽教授法を現代の科学的見地から検証し、有益なものの科学的根拠を示し、疑似科学的なものに警鐘を鳴らしたことと言えます。

大切なのことは流行りの発声メソッドに追従することではなく「なぜそうなるか?」の原理原則を知ることです。

「あなたの声」という楽器は、この世界で、後にも先にも「あなた」しか演奏しない楽器です。本記事を利用して、「あなたの声」を磨いてください!

黒川和伸


1. 発声器官の3要素

声は、
①原動力=モーター
②振動器=ヴァイブレーター
③共鳴器=レゾネーター
から成る楽器です。

①原動力=モーター
声における原動力=モーターは、息です。振動器=ヴァイブレーターに動きを与えます。

②振動器=ヴァイブレーター
声における振動器=ヴァイブレーターは、声帯の振動です。声帯の振動は、空気の流れによって発生します。(この現象のことを「ベルヌーイ効果」といいます。)

③共鳴器=レゾネーター
声における共鳴器=レゾネーターは、声道です。声道は

口腔、咽頭腔、鼻腔

から構成されます。


原動力(呼吸管理)、振動器(喉頭)、共鳴器(声門上の声道)

この3つを「発声器官の3要素」と呼びます。


2. アッポッジョ

リチャード・ミラーは、発声器官は原動力(呼吸管理)、振動器(喉頭)、共鳴器(声門上の声道)の3つ部分から構成されるとし(発声器官の3要素)、声について何らかの問題を抱えている状態は、単に共鳴や呼吸法といった独立した問題ではなく、発声器官の3要素の相互作用に不具合が生じている状態であると述べています。(ミラー,2004)。

・ポイント
よい歌声は、「呼吸、声帯の振動、共鳴の連携」によって生まれる。

発声器官の要素をそれぞれ別に扱うと、たとえば以下のような不具合が生じます。

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