柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける♯1
「に、兄ちゃん…」
「どこ?」
ひとつの命が尽きようとしている。
「苦しい…すごく…息が…はぁはぁ」
「兄ちゃん…」
兄ちゃんと呼ばれている人物は自分の家族である老犬を抱きかかえる。
椅子に座り、呼吸するのがやっとの彼女を優しく膝元にのせる。
何度も何度も茶色のモフモフの毛をなでる。
あぁぁぁ------。彼女は最後の力で目を大きく開き、兄ちゃんへ声をかけようとするが、もはや犬らしく鳴くことができない状態だった。なんとか答えたいと必死だった。
「はぁ…兄ちゃんの…におい」
「に、兄ちゃ…ん…」
「に……ゃん」
飼い主である兄ちゃんは震えながら痩せ細った老犬の身体をなで続けた。
すでに胸の上下運動がないことを知りながらもなでるのを止めなかった。
『ありがとう……チョロさん。』
柴犬チョロ 18歳
永遠の眠りについていった。
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