柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#6
トテトテ…と非常に小さな足音を立てながら、幻獣の女王ディア・ムーンから一時離れ、チョロは執事バートラについていく。
ごはんが食べられるのを楽しみに感じ、ちょんとした尻尾をクネクネさせながら歩く。精神犬齢は18歳であるが、姿は幼犬(正確な年齢は不明、おそらく生後1か月)であるため、まだまだ歩行はおぼつかない感じだ。
しかし、そこは問題ないとばかりに前世の記憶がなんとか身体をうまく動かし、おぼつかないなりにも歩けている。たまに前足がすべり、後ろ足の股関節が開いて、おなかがポテッとついてしまうが…
『ふんむ!むむむ…なんの‼ ごはんのためならこれぐらい…』
さすがにチョロも疲れてきた様子。小さい身体で20メートル歩いた。幼犬にしたら奇跡に近い移動距離だ。
バートラ「イヒヒヒ。無理をなされますな。」
「まぁ~チョロさまは大切な存在です。自由に御身体を動かせる手段が身につくまでは、このバートラめがあなたさまの手足となりましょうぞ。」
といいながらコロコロのチョロを抱きかかえ、おいしそうな匂いのする部屋に到着した。
『ありがとう…』
くんくんくんくんと何度もあごを上げながら、鼻をきかせている。
『ほぉほ~♡ こ、これは…!!』
ヨダレが垂れてしまった。バートラはおやおやとチョロの口元をナプキンでふきとる。いつのまにか白いナプキンをチョロの首回りにつけていた。
それは骨付きチキン、マグロの切り身、ローストビーフ、サイコロステーキ、一口サイズのつみれ団子、干し芋、ポーロなどなど、絨毯にずらりと並べられており、豪華な料理が用意されていた。
※実際のワンコさんには与えてはいけないものも含まれていますので、皆様ご理解くださいませ※
『あああ、あ、いいよね。これ食べて… い、いだだきます‼‼』
チョロは目を、グワッとさせながらすさまじい勢いでむしゃむしゃと食べ始めた。そして、なんとも言えない幸福感に包まれながら、ものの5分ですべてを平らげてしまった。よほどおなかが空いていたのだろう。
おなかのあたりが局部的にパンパンな状態になっていた。料理の量と胃袋の大きさが一致しないのはとても疑問が残るところではあるが…
※ここはチョロが幸せそうならそれでよしとしましょう💦※
『ごちそうさまでした…満足です、ハイ』『げふ~→』
バートラ「イヒヒヒ。お粗末さまでございます。チョロ様の召し上がりっぷり、見ていて気持ちがよくなりました。イヒヒヒ。」
チョロは仰向けになり、おなかが楽になる態勢で眠りモードに入ろうとしていた。『フンガ、フン…非常に申し訳ない姿ですが、身体がもう動かせないです。執事さん』とチョロは助けを求めた。
バートラはチョロを優しく仰向けのまま抱き寄せ、近くにあったフワフワの小さな犬用のベッドに休ませた。今のチョロのサイズにピッタリのベッドだ。そのあと、からだが冷えないようにやや厚めの毛布を包み込むようにしてチョロを覆ってあげた。
「お休みなさいませ。チョロ様。」とバートラはチョロのおでこになでながら、つぶやいた。
『私、これからどうなっていくんだろう…ここで暮らしていいの?』とチョロ。
「もちろんですとも」
「さ、よい夢を。」と執事バートラ。
”兄ちゃん・・・・・・”
チョロは寝息をついていった。
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