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はじめての…

互いに思いを伝えあってから間もなく、愛ちゃんとデートする約束をした。家に迎えに行くと、これまでとは違う雰囲気の愛ちゃんが出てきた。

「あがって~。」

「…。」

「大丈夫、また、お父さんお母さん出掛けてるの。」

「お邪魔します。」

「あら、こんにちは!    あ~愛のせんせい彼氏?」

「あっ、びっくりした?私のお姉ちゃん。」

「こっ、こんにちは!はじめまして!」

「こちらこそ。愛をよろしくねー」

「はい。」

「お姉ちゃん、出掛けるから、後はご自由に~」

ニヤリとしながら出掛けるお姉さんを見送った。

びっくりしている私に、両耳をだした愛ちゃんが、ニコニコしながら言った。

「私たちも、行こっ!」

「うん。」

玄関を出るとポカンとした愛ちゃん。

「くる、車は?」

「えっ⁉️     チャリ…だけど。」

「うそ、チャリでデート?」

「車、持ってないよ。」

「はぁ?本気?」

「俺、免許ない…し…」

「えーっ、免許がない?ウソでしょ‼️」

「まじ。」

愛ちゃんはあきれた顔であった。

だいたい高校3年の時に免許をとる人が多いようだが、私は浪人したこともあって、取らなかった。大学生の時、車は必要がなかったし。

この街は車がないと本当に不便だ。赴任する前、教頭はコンビニも近いしと言っていたが、車で行くと時間がかからないうことだった。家から歩いていくと片道20分はかかる。

愛ちゃんとの付き合いも、ここで終わりかと思っていると…。

「私が車出すから行こっ‼️」

さっきまで、あきれた顔をしていたが、運転席から助手席を指差し、乗ってと手招きしている。情けない気持ちで逃げ出したかったが、愛ちゃんの笑顔に救われた。となり街の小さな喫茶店に入り、免許をとったらすぐに新車を入れ、助手席は愛ちゃん専用席にするからと約束した私だった。

コーヒーだけで3時間も話していた私たちは、喫茶店を出て歩いた。指をからめた恋人つなぎのシルエットは長く、日が沈みそうな公園は私たちの愛を確かめ会うには最高のシチュエーションだった(はずだ)。

何も語らず、何度か目を合わせる私たちだったが、先に進むことはないまま。日没をむかえてしまった。不機嫌そうな顔をした愛ちゃんだったが、すぐ笑顔になり、

「帰ろうかっ!」

「うん。」

家まで送ってもらい、車から降りた。私は運転席側に移動して愛ちゃんに謝った。

「ごめんね。今度、免許取ったら俺が送るからね。」

「ううん、いいの。ちょっと驚いたけどね。」

まだまだ、話していたい。離れたくないと思い、もじもじしていた。すると車から降りた愛ちゃんは、

「今日はありがとっ!」

といって、唇を重ねてきた。

かすかな髪のかおりと、車の香水のかおりにつつまれると同時に、やわらかくあたたかい感覚にひたった。

わずかな時間からさめ、目を開けると、意地悪そうに笑う愛ちゃんがいた。

私は愛ちゃんをぎゅっと抱き寄せ、熱いキスをした。

「もう、大好きなんだから💕」

「俺も、大好きだよ💕」

澄んだ夜空にまたたく星たちが私たちを祝福していた。




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いつもありがとうございます。私は高校の先生、妻は専業主婦です。妻は保育士資格をいかして保育所を開設したいようです。安心して子どもを預け、子どもの成長をあたたかく見守る保育所を開設するために、支援をお願いいたします。