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幸せな空間

夫が、ごはんを美味しそうに食べているのを見ていた。
私が、心を込めてつくったごはんを。
体調が優れないなかで、残り少ない体力を使ってどうにかこうにかつくったごはんを。
それはそれは美味しそうに食べてくれるので、
見ているこっちも
幸せな気持ちになってくる。

私はいま、喉とお腹の調子が悪いせいで
ごはんを美味しく食べることができない。
飲み込むのは苦行だし、
味もよくわからないし、
食べられたとしても胃がムカムカして気持ち悪い。

食べることは、私の“生き甲斐”とも言えるほどの趣味である。
食べることが大好きで、
美味しいものをつくることも大好きで、
ストレス発散にもなるし、
幸せを感じる瞬間でもある。

そんな楽しみが、
化学物質過敏症になったことで、
奪われることになる。

においがするものはもちろん食べられないし、
添加物も体に異変が出るのでダメ、
農薬がいっぱい使われているであろう果物や野菜もアウト。
レトルトパックも変なにおいがついているから気分が悪くなるし、
お惣菜とかも作った人のにおいが移っている場合がほとんどで、食べられない。
となると、必然的に自分で料理するしかなくなるけど、
毎日体調不良で、料理をする気力も体力もない。

日々、においのせいでからだがしんどくて、
でもせめて楽しく過ごしたい、と思うのに
私の趣味でありストレス発散方法でもある
“食べること”が、できないので、
気持ちまでも落ち込んでくる。


そんななかで、だ。
夫が、私がつくったごはんを、
本当に幸せそうに、
私がそんなふうに食べたいと願っている通りに、
ガツガツ食べてくれるのである。

私は、お茶碗にちょびっとだけ盛ったご飯を
ちびちびと食べながら、
山盛りご飯を豪快に食べている夫を見て、
胸のあたりがじんわり暖かくなるのを感じた。

『これが幸せってやつか。』

私はいま、満足に食べる楽しみを味わうことができないけれど、
夫が私の代わりに、美味しい美味しいと言ってたくさん食べてくれるから。
夫の幸せが、私にまで伝わって
食卓が、幸せな空間になる。


この幸せな空間を、いつまでもいつまでも続けていけたら。
それだけで、わたしは生きていくことができる。
この辛い現実とも、向き合っていける気がする。


明日もまた、心を込めてお料理しよう。
夫との“幸せな空間”を、心ゆくまで味わおう。



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