続・介護は楽?誰だそんなこと言ったの?【中期 後編】
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今回は認知症中期 後編になります。まだ前編をご覧になっていないようであれば、まずは前編をご覧になることをオススメします。
前編では、主に認知症中期に起こりうる行動障害をベースに書きましたが、後編では認知症を在宅で介護するにあたって、さらに必要な知識を皆さんとシェアしたいと思います。
3.施設への入所も、選択肢の一つとして真剣に考えましょう
認知症中期の頃からは、認知症の進行によって在宅での介護が難しくなることも大いに考えられます。初期編でも少し触れましたが、一つの選択肢として、施設入所も検討しましょう。
なぜ施設入所を考える必要があるかの?
それは介護をされているご自身も同じように年を重ねます。その際に大病を患ったり、事故に遭ったり、身内や親戚の協力が得られなくなったりと、何かの都合により介護を行うことが難しくなることがあるからです。
介護保険の施設サービスは、3つの種類を中心に実地されています。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム「特養」)、介護老人保健施設(老人保健施設「老健」)、介護療養型医療施設です。
《介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)》
「住まい・終の住処」という性格が強い施設であり、入浴・排泄・食事などの介助、日常生活上の世話を中心にサービスが受けられます。入所期間も特に定められてはおらず、ほとんどの方は入所中に亡くなることが多いです。
特別養護老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体が運営している介護施設のひとつで、低価格で充実したサービスが受けられるため非常に人気です。しかし、多くの方が入居を希望されているのに加えて、入居要件(要介護3以上)が厳しくなったこともあり、なかなか入居できないという現実もあります。
入浴・排泄・食事以外に、リハビリなどのより手厚い介護サービスを受けたいと希望する際は、費用が加算されるので注意しましょう。
施設によって、長期の入院が必要となった利用者は3ヶ月以内に退院される見込みがなかった場合に退所となることがあります。退院する目処が立たないのに、その利用者のために居室を1つ空けておくと、赤字になってしまうからです。
退院できたとしても、特養は病院ではないので透析や点滴などの常に医療行為が必要となった場合に特養でのサービスが継続して受けられないことがあります。医療行為が24時間必要となる場合は介護がメインの特養ではなく、老健や療養型に移行しないと継続して医療行為を受けながら、生活面でのケアが提供できないからです。
一度、長期入院中に退所となったことに腹を立て、役所の福祉課に「あの施設は入院していることを理由に退所してくれと言い出したんだがどういうことだっ!あそこは高齢者を捨てるような施設なのかっ!?」とクレームを付けてきたことがありましたが、そういう契約です。怒るところを間違えています。
ちなみに、入所希望の際は申し込んだ順に入居が決まるのが原則です。
しかし、緊急性が高いと認められた方(家庭内での虐待や身よりのない独居)を優先的に入居させていくケースがあるので、入居までに数年~10年ほど要することもあります。
入居待機者の人数は、自治体のホームページを見るか、施設に問い合わせると教えてもらえます。特養への入居を考える際には、必ず近隣施設の入居待機者を把握しておくのがおすすめです。
特にこの先、相部屋(多床室・地域密着型施設)が無くなっていく方向で国が動いているようです。ユニット型が基本となる高齢者施設で、相部屋を希望されるようであれば、尚更、近隣施設のサービスを把握しておくことをオススメします。
《介護老人福祉施設(老健)》
病気などで入院していた高齢者が在宅復帰できるように支援する施設です。日常生活の世話をしてもらいながら、医学的な管理のもとで介護や機能訓練、必要な治療を受け、早期に自宅へ戻ることを目標とします。
最大の特長はリハビリ専門スタッフ(理学療法士や作業療法士、言語聴覚士)がいるのと、必ず1人以上の医師が常勤が義務付けられています。床ずれの予防・対応、点滴やたん吸引、経管栄養など、日中に限らず深夜にもケアが必要な人にとっては、心強い味方となることは間違いありません。
特別養護老人ホーム(特養)の人員体制と大きく違うのがこの点で、特養では医師の配置は義務づけられているものの、非常勤でも構わないのです。このため、施設で医師が診察などを行うのは、おおよそ週に2回という場合もあります。一方、老健であれば常勤の医師がいるため、利用者の状態などをこまめに把握したうえで医学管理を行うことができます。
特養や介護療養型医療施設にないのが、リハビリ専門スタッフとして理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)のうちいずれかを定員100名あたり最低1名以上設置することが義務づけられている点です。
”在宅復帰”が目的である老健は、利用者に対して適切なリハビリテーションを個別プログラムで提供できるような体制が整っています。病院からの退院後の在宅復帰に向けたステップとして、もしくは在宅介護生活を改善するための手段として、しっかりとしたリハビリテーションを受けたい方に最適な施設です。
ちなみに、理学療法士(PT)とは身体機能回復のためのトレーニングや麻痺のある方の動作改善、運動療法などの物理療法を専門的に行う人のことを指します。作業療法士(OT)は日常生活をスムーズに送るための動作を訓練する専門職で、入浴や着替え・排泄・掃除などの日常生活の動作を行うことが難しくなってしまった方に、レクリエーションを交えながらサポートしてくれます。言語聴覚士は失語症や聴覚障害、嚥下障害など言葉によるコミュニケーションや食べることに関して問題がある方の自立を支援するためのリハビリを提供する職種です。3つの違いをしっかりと理解し、要望に沿ったリハビリが受けられる老健が選んでください。
ですが、老健を利用するに当たってデメリットもあります。老健には常駐の医師がおり、施設内で薬を処方することができますが、入所中は医療保険の適用を受けられません。原則として、介護保険の範疇で医療サービスを利用するしかありません。
薬についても、施設側の介護報酬でまかなうことになります。このため施設は、薬の費用が高くつくと不利益を被ります。抗認知症薬などの中にはきわめて高額な内服薬がありますが、それらの薬を使いたくても使えないという事態が発生することもあり得るのです。
「なぜ、ウチは老健を利用できないのだろう?」「なぜ、いつも断られるんだろう?」と思われている方は服薬される薬の量が多かったりすると断られます。心当たりがある方は服薬量を見直すなどすれば、すんなり利用できるようになったりします。
ですが、高額の内服薬を継続的に服用する必要がある場合は、このようなデメリットがない特養などへの入所を検討したほうがよいでしょう。
《介護療養型医療施設》
長期の療養を必要とする人に対して、療養上の管理、看護、医学的な管理のもとでの介護、機能訓練などのサービスが受けられます。認知症疾患療養病棟も含まれます。
医療法人が運営する施設で、医師や看護師の人員配置が他の施設より手厚く、老健では対応し難い医療処置に対応しています。また、多床室もあることから比較的少ない費用負担で利用できます。「介護療養病床」とも呼ばれます。
食事や排泄の介助などの介護サービスは提供されるものの、あくまでも医療機関という位置付けです。提供されるのは本来、急性疾患からの回復期にある寝たきり患者に対する医学的管理下のケアが中心です。
そのため、特別養護老人ホームのように終身制ではなく、心身の状態が改善してきた場合には、退所を求められることもあります。
介護療養型医療施設の費用は、入居一時金としての初期費用は必要なく、月額利用料が必要になります。月額利用料は、居室の設備、世帯収入や課税状況によって差があるものの、介護老人保健施設よりも高めに設定されています。医療ケアが充実している分、仕方ないといったところでしょうか。
医療ケアが充実している分、掃除や洗濯、買い物やレクリエーションといった生活援助系サービスはあまり提供されていません。病院に近い存在だと思ってもらえればわかりやすいでしょう。
介護療養型医療施設の入所申し込みは、施設に直接行います。入居を希望する施設への申込書を記入し、窓口に提出します(複数の施設への申し込みも可能です)。それを施設スタッフや医師、行政担当者などで構成される委員会が、「要介護度」「介護の必要性」「介護者の状況」「待機期間」「資産や収入額」などから、総合的に判断して、入所が決定されます。
2012年から新設が認められなくなり、施設数が減少している介護療養型医療施設は、定員の9割以上が埋まっており、入所まで通常、数か月程度の期間を要するといわれています。入居を希望する場合には、待機人数や待機期間などを各施設に確認し、可能であれば複数施設に申込を行った方がよいでしょう。
なお厚生労働省は、介護療養型医療施設を「介護療養型老人保健施設」や「介護医療院」に転換させるなどし、将来的に療養型を廃止する方針です。
医療ケアの手厚さを重視する場合は、民間企業が運営している有料老人ホームの中で、看護・医療体制が充実した施設を探すことも、選択肢のひとつです。
その他にも介護保険には、特定施設入居者生活介護というサービスがあります。有料老人ホームやケアハウス、少人数で共同生活を送る認知症対応型共同生活介護(グループホーム)のサービスがあります。
それぞれ、多種多様な役割がありますので「入所できるのなら、どこでもいい」と考えず、慎重に施設選びをすることをオススメします。
認知症の方は、自分の意思をうまく伝えられない場合が多くあります。また、施設側が本人の意向を十分に理解していないと、介護する側の都合を優先した内容となってしまいます。
実際に施設訪問するなどして、認知症の方への介護についてどのような考え方や工夫をしているのか確認するもの一つの方法です。認知症の方への尊厳を意識している施設を選ぶことが大切です。
可能であれば、家族内でもどのような施設に入りたいのか希望を聞いておくことも必要です。相談しにくい内容だとは重々理解しますが、本当に大切なことです。本当に必要となった時に、意思の疎通が取れないことが多いからです。入所される方にとっても、見送る側にとっても悔いが残らないように最良の選択を見つけましょう。
4.福祉用具を活用しよう
介護施設の説明をしましたが、それでもすぐに施設利用ができるといったわけではありません。まだまだ在宅での認知症介護を必要となった際には、ご自身の介護スキルを上げる必要があります。
介護自体も複数人で行えるのか単独で行うのかによっても大きく状況は変わります。介護が必要な方が男性か女性でも大きく異なりますし、季節によって衣類を着せることも難しくなってきます。
そこで活躍するのが福祉用具です。
《車椅子》
車椅子も様々な形状をしているものがあり、スタンダードタイプからリクライニング式、肘当てが座面まで下がり、移乗がしやすいようにタイヤが小型化しているものと多種多様と存在します。
大袈裟と思われる方もいるとは思いますが、同じ姿勢のまま座り続けるのは体にとってかなりの負担です。ショートステイやデイサービスを利用する際は必要となる機会も増えると思いますので、福祉用具専門相談員と一緒に考えましょう。
《マルチグローブ・スライディングシート》
ベッド上でも安楽な体勢を取ってもらうためにスライディングシートやマルチグローブを活用するととても楽です。冬の着衣時に、マルチグローブを介護者の手にはめて衣類を着せるとスルスルっと袖を通せるのでとても便利です。寝返り介助などの体位変換をおこなうときに、 皮膚のずれや摩擦を軽減します。
スライディングシートは、ベッド上での水平移動ができない、体の向きを変えられず、起き上がらせることができないなどを解消できます。自分より体格の大きい方でも簡単に水平移動ができるので、とても便利です。
ちなみに360度自在に動くタイプがオススメです。一方向にしか使用できないシートは、介助中に向きがわからなくなってしまうので不便です。必ず360度自在に使用できるものを選びましょう。
スライディングシートやマルチグローブに関しては、介護現場でも必ずと言っていいほど普及している介護用品ですので、とてもオススメです。注意点としては、必ず消毒できるものや洗濯可能なものを選んでください。
《スライディングボード》
スライディングボードは、画像のように車椅子とベッドの移乗を楽に行うための道具です。上記のボードには半月型や三角型など、形状も様々ありますが、迷った時は長方形タイプが使いやすいのでオススメです。大きさもロングとショートとありますが、可能であれば両方を試してみて、使いやすい方を選んでください。
スライディングボードを使用する際の注意点は、進行方向に向かって少し傾斜をかけ、下降していくようにセッティングすることです。車椅子へ移乗する際には、必ず肘当てが取り外せたり、跳ね上げ式になるものを選んでください。ボードがタイヤに干渉してしまうのであれば、三角型がオススメです。
これまで紹介した福祉用具以外にも、片麻痺用の介護食器や食事用のエプロン、ポータブルトイレのオススメなどまだまだたくさんありますが、認知症中期の方には上記の4つが必要となる機会が多いでしょう。
福祉用具の使い方が不安であったり、イマイチうまく使いこなせないという方は介護技術向上セミナーなどが各都道府県で実地されたりしていますので、積極的に参加してみてください。とてもタメになります。
《徘徊感知・離床センサー》
認知症中期にとって1番の問題は徘徊があるかどうかです。この先、徘徊による事故や事件は必ず増加します。徘徊を防ぐために部屋へ閉じ込めたり、扉の前にタンスのような重いものを置いたりするなどして行動を抑圧し、衰弱した状態で救急搬送されるなどの虐待も問題となっています。
介護者も自分の生活があるため、四六時中起こる徘徊を見守り続けることなんて絶対に不可能です。片時も目を離せないストレスは尋常ではないくらい心をすり減らしていきます。
この時に役立つのが徘徊を未然に防ぐことができるセンサーです。徘徊センサーは、どのような行動をした時に徘徊を知らせてくれるかによって種類が異なります。それぞれの特徴をチェックし、認知症の進行具合やご家族の状況に合わせて、徘徊センサーを選びましょう。多種多様にあるセンサーの中から、一部ではありますが、オススメを紹介します。
《ベッドから起き上がった時に知らせるタイプ》
このタイプの徘徊センサーは、ベッドから起き上がり、ベッドを離れようとした際に知らせてくれます。転倒の危険があり、家の中であっても一人で歩かせるのが不安だという方に使用してもらうとよいでしょう。夜間にトイレへ行こうとされる際にも有効です。
介護施設で、最も多く使用されるのがこのタイプになります。
《ドアや玄関を通った時に知らせるタイプ》
玄関や部屋の入口に取り付けておき、そこを通った時に知らせてくれるタイプの徘徊センサーです。ドアの上に取り付けておき、その下を通った際に知らせてくれるものや、玄関や部屋の入口に敷いておき、それを踏んだ際に知らせてくれるマット型のものがあります。
部屋の中で歩く分には問題がないけれど、外に出たときには把握したいという場合にオススメです。介護施設でも当然使用されています。
《本人が身につけるタイプ》
小型の発信機を身につけ、持ち歩くタイプの徘徊センサーです。あらかじめ設定しておいた距離以上に行った場合に知らせてくれます。機種によっては、スマートフォンのマップ機能(GPS)と連携し、詳細な位置も検索できるものもあります。
高機能で便利なセンサーではありますが、本人が発信機を外してしまっていたり、衣服に縫い付けた時に限って、着ていなかったりすることあるので、注意が必要になります。自宅の鍵や常に身につけようとする物に付けておく方もいます。
認知症の人は、家の中や自分の部屋に普段とは違う機器が設置されていると違和感を感じる方もおられます。そのような方の場合、せっかく設置した徘徊センサーを片付けてしまったり、コンセントを抜いてしまったり、最悪の場合は破壊してしまうといったケースもあります。
なるべく本人が違和感を感じにくい、部屋に溶け込むデザインのものを選びましょう。コンセントに違和感を感じて抜いてしまうケースがみられる場合には、電池で動く徘徊センサーを利用するのもよいかもですが、電池切れに気付かないこともよくあるので、できる限り、コンセントタイプのものがオススメです。
徘徊センサーが徘徊を検知した際、それを知らせてくれる方法も機器によって異なります。例えば、チャイム音やメロディが鳴るもの、受信機のランプが光るものなどといったものがあります。
日頃利用する上で、本人にとっても家族にとってもなじみやすいものを選択しましょう。特に、大きな音や光で驚かせてしまうことのないよう気を配ることが大切です。センサーのチャイムに反応して「電話がなり続けるから、気が散って眠れない」と言われる方もよくおられます。
今回はここまで…
認知症中期の後編はこれにて終了となります。実際は、まだまだ伝え切れていないことはたくさんありますが、全てを伝え切れないほど認知症というものは知れば知るほど奥が深く、何が正解で不正解なのか人によって違いすぎるので、こればかりは経験してみないとわかりません。
次回は、いよいよ認知症介護の大詰めでもある後期編がスタートします。元気だった前期・中期から状態が少し落ち着くも、最期を看取るその日まで、まだまだ介護は続きます。この次ぎも、是非、ご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
冒頭でもお伝えしましたが、この記事は、全ての介護・福祉従事者の方や在宅で介護をされている方に少しでも多くの情報をお届けしたいがために、無料で掲載しております。
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現在の日本で大麻を使用することは違法です。大麻に対して、多くの人が偏見を持っていることも重々承知しています。ですが、現在合法となった国も以前はそうだった国がほとんどです。
「百聞は一見にしかず」といいますが、「百聞は一服にしかず」です。そんなに大麻が嫌なら吸わなければいいだけですし、大麻の恩恵を受けたいけど、ハイになるのが嫌だ・怖いと思われるのなら、ハイにならないように摂取すればいいだけです。
ただ、大麻を必要としている人は確実にいます。その人が穏やかに暮らしたいと願う気持ちや、医療目的で大麻を使用したいと願う人の権利を、無知や偏見で奪ってはいけません。
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