僕が個人開発をすすめる理由
今の僕の一番の趣味は個人開発だ。代表的な Web サービスとして、賃貸検索のサービスである Comfy というのを運営していたりする。
他にもいろいろなことに興味がありさまざまなことに手を出しがちな僕は、趣味と呼べるものがたくさんある。ピアノを弾いたり料理をしたり、美味しいものを食べに行くこと、まだ訪れたことのない場所へ旅行すること、子どもとお出かけしたりめいっぱい遊んだりなどなど。体を動かすことも好きだし、友達とご飯を食べたりお茶したり、飲みに行ったりするのも好きだ。
それでもここ数年間で、限りある時間の中で一番の時間を使い一番たのしんでいるのは個人開発だ。
個人開発はとてもたのしい。はっきり言って僕にとっては沼だ。
この記事では、僕がなぜ個人開発が好きなのか、そしてなぜ多くのソフトウェアエンジニアの人に個人開発をおすすめしたいのかを書く。
1.技術力の伸びがエグい
これは容易に想像できることもしれないが、個人開発でプロダクトを一つ作り上げると、それがどんなものであれ技術力がとてつもなく向上する。
エンジニアの人であれば誰しも経験があると思うが、書籍や Web の記事などを通して知識があるだけの状態と、実際に使ってプロダクトに活かす経験を持っていることとは、雲泥の差がある。個人開発は、その「活かす経験」を確実に手に入れることができる。
面接に来た人が「書籍で勉強しています」というのと、「このプロダクトを使ってみました。◯◯なところが好きでしたが、△△に関しては別の □□ のほうがよく出来ていると思いました。なぜなら…」というのとでは、どちらがより技術の造詣が深いかは一目瞭然だ。
また、個人開発では、会社員として働く多くの人の実際の業務とは異なり、ありとあらゆる選択すべてを自分で判断して、さらにそれを実行しなければいけない。
すべての裁量が自分にあるということはとても自由で素晴らしいのだが、それはつまり、自分の判断の結果の責任はすべて自分で負わなければいけないということだ。イケてないライブラリを使って苦労したり、過去の自分が雑に書きなぐったコードが思うように読めずにストレスを感じるのも、全て自分のせいになる。
そんなことは当たり前であるためか、判断の精度を少しでも上げようという防衛本能のようなものが働き、なにかを決めなければいけないときにはとことん調べたりする。そしてそれを自分で実行しなければといけない。
それらのことから、迷った時の判断の際、直感が研ぎされるような感覚が僕にはある。
2.強いポートフォリオになる
個人開発で作ったものを公開すれば、そのプロダクトは自ずとあなたの技術力のみならず、ひととなりやセンスをも示してくれたりする。
しかしもっとインパクトの大きいことは「やり切る力」が示せることである。
個人開発をしていても、リリースまでたどりつかない人を多く見る。
個人開発に挑戦してみた人なら分かっていただけると思うが、「作りきる」というのは想像以上に大変だ。
そして個人開発の経験がなくとも、エンジニアとして(もしくはエンジニアではない職種の人でも)ある程度のレベルになってくると、「やり切る」ということがどんなに大変で、どんなに大事かがわかるようになる。特に仕事においては、「その人が最後までやりきる力があるか」というのは、作業を任せたりお願いしたりする上で非常に大切な指標だ。
それはつまり、採用の選考においても「やり切る力がある」ことの証明は、非常に強い武器となる。
また、採用の選考では、多くの面接でも個人開発のプロダクトの会話で盛りあがることができる。
面接官から先に質問されることも多いが、なんらかの質問への答えで個人開発での経験にひも付けて話せることは非常に多いし、その話の流れでプロダクトの話がふくらむことは多々ある。
かくいう僕も、賃貸検索のプロダクトをリリースしてからは、その話が出なかった面接のほうが圧倒的に少ないくらいだ。
3.自己表現の手段としての多幸感
作り上げて、初めてリリースするときの高揚感。
「遂にできたーーー!!」という達成感。
やり切った自分の行動とそれまでの苦労を乗り越えられた満足感。
自分の作りたかったものを努力して作り上げて、それを世に出すという行為には、なんともいえない充実感がある。
そして自分の、自分だけのプロダクトという存在は自己表現の成果物として大きな多幸感を与えてくれる。
料理をしていて美味しいものが出来て「まじで美味しいもの作っちゃった…!!」となった時でも、その味を世界の不特定多数のひとに届けることは出来ない。しかし個人開発の成果は世界中のひとに届けることができる。
言ってみれば、自分の作品を世界中の人たちに見てもらえるチャンスがあるということだ(実際はプロダクトを多くのひとに届けるということがどんんなにも難しいことかを思い知らされるのではあるが…)
これは、自己表現としての満足感をとても高めてくれる。インターネットで世界中がつながっていることの恩恵は、本当に人類にとって素晴らしいと思う。
個人開発に初めて取りかかる時、多くのひとは本業のかたわらでの作業になると思う。自分もそうだったし、今個人開発だけで食べていっている人も、最初はそうだった人ばかりだ。
だから、個人開発の一番難しいところは「継続的に時間を作って取り組むこと」であり、個人開発を始めてみようかなと考えている人は、まずはそのことを肝にめいじて、あまり時間がかからないものをとりあえず作ってみてリリースしてみることを目標にするとよいと思う。
まずはひとつ作ってみてその楽しさと喜びに目覚めてしまえば、ふたつ目以降のプロダクトは、開発途中の苦労も乗り越えられる可能性は高くなる。
そしてその後には、多くの人が「個人開発」という沼にはまっていく。
個人開発でプロダクトを作ってみる経験には、確実にいばらの道が待っている。しかしその後には「個人開発沼」という素晴らしい体験も待っているかもしれない。
「個人開発でのプロダクトのリリース」という険しい山を登りきった後には、実はその先にさらなる高い山がいくつもそびえ立っていることに気がつく。
しかし、登りきったその山から見える景色は間違いなく、あなたがまだ見たことのないものだ。しばしその山頂からしか見えない美しい世界を堪能してみるのもいいと思う。
その景色を見ながら、険しかった山登りの道中に思いをはせてみれば、登り始める前とはもはや別の人になっているくらい成長していることに気づくであろうと思う。
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