なぜ Comfy は 100 件以下に絞り込まないと物件一覧を見れないのか

個人開発のサービスとして、賃貸物件検索の Comfy というサービスを作った。もうかれこれ 3 年以上、ひとりで運営している。

この Web サービスの Comfy は、いま日本全国にある賃貸物件を、様々な条件で高速に絞り込みができるというものだ。

特徴的なのは、エリアや駅を絞り込むのが必須でない
そのため、例えば「家賃 3 万円以下の物件」「41階以上の物件」「ペット相談可の物件」などがいま全国で何件あるのかを見ることができる(もちろん、都道府県や市区町村を絞った上での件数もすぐに調べられる)。

通常の物件検索のサービスだと、まずエリアや路線や駅等を選んで条件を絞り込んでいくとその物件の一覧が表示される。
その一覧に対して、さらに条件を追加して絞り込んだり、その一覧を「価格順」「オススメ順」「広さ順」などで並び替えたりする。

しかし Comfy では、いろいろな条件をポチポチしていって 100 件以下に絞り込まないと物件の一覧が見れないようになっている。
これははっきり言って、他の賃貸検索サービスに比べて、かなり不便な機能だ。

「100 件以下に絞り込まないといけない」の図

しかし、この「100件以下に絞り込まなければいけない」のは、技術的な制約や開発が大変だからという理由は一切ない
あえて、ユーザさんにその制約を課している。

ユーザさんからもよく「100件以下まで絞り込まないといけないのが不便」「100件を超えた物件数でも一覧を表示できるようにして欲しい」というご要望を頂く。

正直言って、技術的には大したことはない。
条件が押されたり変更されたりする度に、すべての条件に関しての件数を再計算し、それらを高速に UI 上に反映するほうが、よっぽど難しい(その機能はリリース当初からずっとある)。
そのため、いままで何度もその制約を外そうかという誘惑に駆られた。

じゃあなぜそんな制約をわざわざ課しているのか。
ぼくはユーザさんに、本当に満足のいく物件を見つけてほしいと思っているからだ。
ユーザさんには、物件選びにおいて妥協せずに、素敵な物件と出会って欲しいと思っている。

物件選びはとても大変な作業だ。

同じエリアで何回か引越しを経験していたりすれば、だいたいの賃料の相場観や地理感覚があるため、そこまで大変ではないかもしれない。
しかしたいていの家探しは、土地勘がない場所だったり、自分の理想の物件がどれくらいの金額なのかを知らない状態がスタート地点だ。

そうなるとまず、自分が理想とする物件の家賃の相場をまず知ることから始まる。
自分の理想の条件を全て入力してみると、多くの人にとって、金額面でまったく手が届かないのではないかと思う。
もしくは、金額の絞り込みを入れていると、悲しいかな「ヒット件数 0 件」となってしまう…

そうするとその後「どの条件が譲れなくて、どの条件なら捨てていいのか」ということを、ひたすら物件の候補を調べながら自分の中で決めていく必要がある。
この作業はとても大変だ。物件の候補を次々に確認しながら、「こういうのは嫌だ」「こういうのはアリかも」と考えることを延々とするのは、時間もかかるしかなり疲れる。

この作業とは、つまるところ「自分がどういう物件に住みたいと思っているのか」ということと「いまの世の中にはどういう物件が存在しているのか」ということの擦り合わせだ。

ここで Comfy の「高速な件数表示」がめちゃくちゃ活きてくる。

「こういう条件であれば、このエリアに XX 件存在する」「ここの条件を変えると件数が 0 件になる」というのが瞬時に可視化されていくことで、自分の中での「各条件の相場観」のようなものが段々と出来上がっていく

すぐ一覧を見ずに「いまの条件だと物件の件数はどれくらいあるか」というのを常に意識して「どの条件を足していけば 100 件以下にできるのか」ということを常に考えることによって「相場観」を確立しやすいはずだとぼくは信じている。
そしてまた、結局のところ内見できる物件なんぞ多くても 10 件程度なので、最終的にはどこかで候補を絞り込む作業が必要だ。
そしてそれは、なるべくなら不動産屋さんのおすすめや Web サービスのサジェストなどではなく、自分の意志で 10 件程度に絞れたほうがよいと思う。
なぜなら、そのことによって「自分は住まいに何を本当に求めているのか」が明確になると思っているためだ。

Comfy の「高速な件数表示」がここで活きてくるというのは、言語化するのはとても難しいが、Comfy をポチポチさわっていただければなんとなく分かってもらえるのではないかと思う。

こういった作業をあまりやらずに「もうこの物件でいいや」「なんかピンときたし」という感じで調べ尽くさないまま進んでしまうと、後々もやもやした気持ちが残ったり、後悔したりすることがある。

「もっといい物件があったのではないか」「同じ条件だったら、ちょっとエリアを変えれば家賃が 1 万下がったかもしれない」

本当に満足のいく物件を見つけるためには、自分の中での「相場観」をある程度確立しなければいけないのだと思う。

自分が物件に何を求めているのか、何を大切にしているのか、ひいては、どんな家に自分は住みたいと思っているのか、ということは、物件の探し始めにはかなりもやもやしているものだ。
Comfy は、それらを明確にしていくのに役に立てるのではないかと思う。


余談だが、この機能に関して昔、とある尊敬している人に言われた事がある。

「100件以下にまで絞り込まないといけないところに choo さんの哲学を感じた」

哲学というほど大層なものではないけれど、そういう「頑な意志」みたいなものを感じ取ってくれたあの人は、さすがだなーといまでも思う。


 一人でも多くの人が満足のいく物件と出会えて素敵な暮らしを送れることを心から願っている。

いいなと思ったら応援しよう!