情報科学の社会人大学院に出願する際にぼくが出した小論文

3日前に書いたエントリでは、ぼくが 2017 年に JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)の東京社会人コースに入学するまでにしたことを書いた。

出願時に必要な小論文に関して、ぼくが当時書いたものを公開することとした。

なお、3日前のエントリでも引用したが、小論文のテーマについては下記のような感じで、ぼくの出願時の 2017 年も同様であった。


課題:「本学入学後に取り組みたい研究課題について」

研究の背景、目的、内容、方法等を自分の考えに基づいて記述すること。
なお、研究の準備状況やこれまでの研究(たとえば卒業研究)との関連
あるいは専門を変える理由等を追加してもよい。

https://www.jaist.ac.jp/admissions/data/2.2.3syakaijin_M.pdfより

当時のぼくの書いた内容は、まったく論文の体裁をとっておらず、参考文献すら一切ない「エッセイ」というようなものだ。

これをインターネット上に公開することは正直かなり恥ずかしい気持ちはある。
しかし、「こんなものでもダイジョブなのか」と思ってくれる人がいるかもしれないと思い、もし「とりあえず出願してみようかな」と悩んでいる人の背中を押すことができるならと思い、共有することに決めた。
(ただし、もしかしたら近いうちに非公開にするかもしれないので、気になる方はコピペしてローカルに保存なりしておくといいかもしれません。)

前提や注意事項など

  • ぼくが出願した当時は、長期履修制度で 4 年間在籍可能だったが、現在では 3 年間が上限とのこと。(学費を払えば、留年というカタチでの延長は多分可能)

  • 募集要項に『教員一覧(トップページ→東京サテライト→[概要]教員一 覧)を確認し、指導を希望する研究室の教員と事前に連絡を取り、研究室受け入れの内諾を得ることを 推奨します。』という記載がある。

    • そのため、配属を希望する研究室の先生にアポを取ってみて、面談をしたほうがよいと思われる。

    • 面談時に、出願時に提出する小論文も見てもらうとめちゃくちゃいいと思います。いくつかの先生と面談して、一番行きたい研究室の先生に見てもらうのもよいかと思います。(ただ、1月中旬から下旬は、修論の対応で忙しいかもしれないので注意)

  • ぼくは、出願時の別書類で記載した「希望の研究室の先生」に事前のアポも入れず面談もせずに小論文を書いて出したが、なんとか合格させてもらえた。

    • しかも、入学後の研究室の配属希望調査で、まったく別の研究室を希望し、小論文に書いた内容とは全然違う内容で研究をすることとなった

    • 今考えると(というか当時も思っていたけど)、かなり失礼な可能性があると思うので、ぼくと同じことはなるべく止めたほうが良い気がします。

    • が、入学後に、「出願時の小論文に書いた内容と違う研究、異なる研究室を希望してもよいのか」というのを大学側に聞いたところ「まったく問題ないです」という回答だったのを覚えている。

実際に提出した内容

課題:「本学入学後に取り組みたい研究課題について」
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【課題概要】

私が入学後に取り組みたい研究課題は、音楽の演奏における「美しさ」の実態を解明し、音声情報から美しさに関する何らかの数値データや指標を抽出するモデルの確立である。

【背景・目的】
音楽演奏という物理現象に接した時、人間は「感動」という体験をすることがある。
多くの場合「心地よい」といった類の感情が起こる体験であり、それらは「美しい演奏を聴いた」という言葉にまとめられるように「美しさ」と何らかの関係があると考えられる。

当然個人の感じ方は様々であり、全ての人間が「美しい」と認めるものは存在しえないが、「多くの人に美しいと思われるもの」とそうでないものの差は存在するように思える。クラシック音楽の同一楽曲の複数の演奏において人気の有無が存在するのは事実である。

「美しさの差」が存在するものとすると、それは一体何かということに関し私は長年疑問に思っており、更には「美的体験」とは一体何であるかということを探求してみたいという思いがあった。そのため、音楽演奏から「美しさ」の実態を少しでも解明したいと思っており、それが本研究に取り組みたい理由である。

上記を踏まえ本研究の目的は、多くの人に美しい音楽とされるための条件が音声情報のレベルでどういったものなのかを探求し、「曲の美しさ」「演奏の美しさ」「音色の美しさ」等を分類した上で「音楽の美しさ」を数値データ、数式等でモデル化することである。
(なお個人的には、研究を通して人間の「美的体験」に関して少しでも解明できればと考えている。)

【内容・アプローチ】
クラシック音楽を題材とする想定で、現時点では下記の方法を考えている。
・「美しい演奏」の分類及び数値化
過去の音楽演奏に対する批評やCD の売上等の様々なデータから統計的手法によって、演奏に対する評価指標を得られるようにする。
・評価の数値的指標に影響する要因の解析
演奏の音声情報とその評価指標をインプットとし、どのような音声信号が評価に影響を与えるのかを機械学習等を用いて解析し「美しさ」の要素を明らかにする。

【計画】
入学した場合、長期履修制度を前提として学習する予定である。
基礎学力及び研究手法への知見が圧倒的に不足しているため、2年間はそれらの学習に注力する予定である(基礎数学、信号処理論、機械学習を用いた手法の学習等、研究手法等)。
その後の2年間で先行研究等の調査や論文の執筆により成果を上げられればと考えている。

能力・経験不足により、どの程度まで研究目的を果たせるかは不安だが、入学した場合少しでも成果を残せるよう努力する所存である。

(以上1071文字)

昨日書いたエントリ「情報科学またはコンピュータサイエンスを学び直せる大学院の一覧記事まとめ」の中に登場する canonrock さん(@canonrock_t)の下記エントリの中に書かれている準備と比べると、自分の出願時がいかにいい加減だったかが思い知らされて余計に恥ずかしい。

でも、当時の先生から聞いた話だと、入試では「意欲」を最も重視して合否を決めるとのことだったので、出願時の研究計画の作成スキルより意欲が示せればそれで問題ないかもしれない。
(けど、ぼくが受かったのは運がよかっただけかもしれないので、ぼくレベルのものを書いて落ちてもぼくは責任取れません…w)


そして、もう一度念のため書いておくと、ぼくは、入学後の配属希望調査で、上記のような音声信号処理等に関連する研究室とはまったく別の研究室を希望し、配属された。
そして小論文に書いた内容とは全然違う内容で研究をすることとなった。
(なるべく真似をしないほうがいいと思います)

もしこのエントリが、一人でも多くの人を励ましたり、学び直すことの決意への背中を押すことができるなら、この上なく幸いだ。


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