キャリア孔明はアンチ勢力に勝てるのか
本記事ではキャリア孔明(@career_koumei)というXの匿名アカウントによるアンチ勢に対する投稿について、法的な観点で正当性を検証してみようと思う。
筆者は弁護士でもなければ法学部出身でもないので、本記事の内容にもし間違いがあればコメント欄で訂正いただけると幸いである。
キャリア孔明の宣戦布告
キャリア孔明(@career_koumei)により、アンチからネットいじめを受けているという訴える内容の投稿がされた。
添付されているスクリーンショットは自身に向けられた批判的な投稿をスプレッドシートに記録したものである。
なぜこんな無意味なことをするのだろうと思った方もいるかと思うが孔明の罠である、私はこれをアンチに対する牽制だと理解している。
恐らく法的措置をとるために全ての情報を証拠として保存しているのだろう。
つまり彼は脅しとして投稿したか、あるいは本気で提訴するつもりでいるのかもしれない。
ではキャリア孔明はアンチからの投稿により権利を侵害されたとして訴えることは可能なのだろうか?
結論から言うとNOである。
その理由について法的な観点で説明する。
名誉毀損の可能性について
名誉毀損とは公然と事実を指摘して人の社会的評価を低下させる行為である。構成は以下のように分解して説明することが出来る。
①公然性
「公然性」とは、不特定多数の人々が把握できる状態を指す。SNSの投稿は公然性を満たしていると言える。
②事実の摘示
「事実の摘示」は、具体的な事実を指摘することを意味する。例えば「ちょめ子は無職である」という投稿をすることは事実の摘示にあたる。これは実際に無職であるかどうかは関係なく、虚偽であったとしても事実の摘示となる。
③社会的評価の低下
事実を摘示されたことにより社会的な評価が低下すると認められる場合、名誉毀損は成立する。実際に社会的な評価が低下したかどうかではなく、一般的な観点で評価が下がる危険性があるかどうかで判断される。
キャリア孔明の被害ケース考察
本件はX上の投稿での話なので①公然性を満たしているということが出来る。(これがDMでのやり取りであれば名誉毀損には該当しないが)
また「無職」を摘示する投稿もいくつか散見された。実際に無職かどうかはさておき、②の事実の摘示に該当する。
しかし残念ながらキャリア孔明は名誉毀損で訴えることは出来ない。その理由は匿名だからである。
匿名アカウントに対する名誉毀損が認められるには、そのアカウントの実社会の対象者が特定可能であることが条件になる。(同定可能性)
つまり、Xを利用している一般人がキャリア孔明というアカウントから個人を特定できなければ、現実世界において社会的評価が低下するわけではないので③の条件を満たすことが出来ない。言い換えればインターネット上の人格に名誉権は存在しないことになる。
私の知る限りではキャリア孔明は実名を公開していないはずである。アンチ勢からもキャリア孔明の個人を特定出来る内容の投稿はされていない。(面識がないので当然ではあるが)
従ってキャリア孔明は名誉毀損の法的な成立要件を満たすことを立証出来ないため損害賠償を請求することは不可能である。
例え「キャリア孔明は無職だ」とか「キャリア孔明は小卒だ」と投稿したとしても名誉毀損にはならないということだ。キャリア孔明というインターネット上の架空の人格には法的に認められた職歴も学歴もないのだから。
侮辱(名誉感情侵害)の場合
キャリア孔明が権利侵害で訴えることが出来るとすればこちらである。
名誉毀損と違い、事実を摘示していなくても成立する。なので匿名であっても名誉感情を毀損されたことを証明できれば訴えることは可能である。つまりキャリア孔明のアカウント所有者は自分であると立証できればよい。
しかし侮辱の場合、社会通念上許される限度を超えるものでなければ違法性は認められない。そのため名誉毀損よりもハードルが高い(非逸脱性)
このように違法性が免責される条件を違法性阻却事由という。
例えば、単に「バカ」とか「クソ」と表現しただけでは訴えることは難しい。
軽度の侮辱発言であれば刑事事件として扱われることはまずないだろう。(警察署に届出したようだが・・・)
「卑弥呼ぞ」を「卑弥を呼ぶぞ」と勘違いしたことを指摘した投稿など論外である。
侮辱罪(または民事の名誉感情侵害)として認められるには、よほど「死ね」とか人格を攻撃するような投稿をしつこく何度も受けた場合に限られる。アンチ勢の投稿をひと通り確認したところ、そのような度を越した投稿は見当たらなかった。
仮に民事で勝訴したとしても名誉感情侵害で請求できる慰謝料の相場は低い。弁護士費用などと相殺すればマイナスになり経済的合理性はない。(数万円〜30万円程度)
アンチ勢はコンサルやITエンジニアなど、一般的に所得の高い職業につくアカウントが多いと見受けられるため資力的にも厳しい戦いになるではないだろうか。
以上の通り、かなり可能性が低く難しい挑戦になると思われるが、彼がどう動くのか興味深いものである。
それよりも実名を公開している経営者アカウントたちがこのような暴力的な発言をしていることに驚きであり恐怖を感じる。アンチ側もいつでも被害届を出せるように準備をしておく必要があるのかもしれない。