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「この道を通ったことがある。」

はじめての場所なのに知っている気がする。
そういう感覚を「既視感」という言葉で呼ぶと知ったのは、小学生のころでした。
以来、思い出したように既視感を感じることがあります。

感覚や感情は、言葉によってはじめて形をなし認識される、という経験でした。

さて、今回の本は別に既視感だの言語だのに関した本ではありません。
今回はこちら。

有栖川有栖著 『双頭の悪魔』(東京創元社、1999年)

有栖川有栖の「学生アリス」シリーズ3作目です。
わたしはこの江神シリーズの中ではこの巻が一番好きなんですよ。

江神さんが一番かっこよく映るので。

これは不思議だなというか、作家の腕前そのものなのだというか、あれなんですよ。
アリス視点の江神さんより、マリア視点の江神さんのほうがかっこいいんですよ。
そして今回は(今回も)クローズドミステリ。
しかもマリアだけ他の部員と切り離されているところに、江神さんが助けにかけつけるんですよ。

かっこよくないわけがない。
しかも水も滴るいい男であるわけで。

いやあでも、これがアリスがこの立場で江神さんを見たとして、ここまでかっこいいだろうか、と思うと、やはりマリア視点だからだと思うのです。

それをね、意図してなのかどうなのか、「かっこよさ」の種類が違うのが、作家の腕前だと思うのです。
いやー、痺れるね。
わたしは一番好きなシーンに栞をはさんでおいて、たまに開いては悶えています(変態ムーブ)。

それはさておき、物語の方は2ヶ所で同時進行のミステリで、わたしのキャラ読み脳には全く何が何だかわからないのですが、とにかく解決編が爽快でたまらないですね。
謎が解けるとき、目の前の霧が晴れていくようでとてもすきです。
幸い江神シリーズのほうは、物語と一緒におおよそのトリックとか犯人とかオチを覚えているのですが、読んでいる間に都合よくその辺を忘れて読み進めるので、毎回楽しめます。
とてもお得な脳みそをしております。

久しぶりに読もうかしら、江神シリーズ。
4作中1番分厚い(ただし4作目は上下巻)ので、やや持ち歩くのが大変ではあるんですけどね。
京極夏彦ほどじゃないので。

みなさんはゴールデンウィーク、何を読む予定ですか?

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