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「あの情景から語り始めてみよう。」

例の如く、「どの情景だい???」となっています。
やってまいりました、有栖川有栖著「内容おぼえてないよ」シリーズです。

有栖川有栖著『朱色の研究』(角川書店、2000年)

『緋色の研究』のオマージュ作品ですね。
ホームズ、あるいはポアロのオマージュ作品は、本格推理作家にとっては避けて通れない道なんでしょうか。

内容おぼえてないと書きましたが、覚えてないレベルには段階があります。

タイトルに見覚えがないもの。
タイトルだけは見覚えがあるが、目次を見ても何も思い出さないもの。
目次を見れば、なんとなくどんな話だったか思い出すもの。
なんとなくどんな話か覚えていて、目次をみたら登場人物とかトリックとかが朧げに思い出せるもの。
真犯人やトリックは覚えていないけれど、話の筋は覚えているもの。

今回は、「タイトルだけは見覚えがあるが目次を見ても何も思い出さないもの。」です。
”タイトルだけは見覚えがある”と言ったって、『緋色の研究』のオマージュなんだからそりゃ当然です。

さて、いいかげん本文に入りましょう。
この一文、序章なんですが、序章には「夕景」というタイトルが付いています。

日本語ならではだなあ、と思うのが、「朱色」と「夕」と「情景」で、なにやら切なさと憧憬と哀しさと眩さみたいなものが、ぐぁっとせりあげてくるからです。
書き方も懐古的ですしね。

日本人、夕日好きすぎ問題。

それはともかく、出だしを数ページ読んでみたんですが、ほんとうに話の筋が思い出せません。
ここまでわからないものも珍しい。
火村シリーズということしかわからない。

有栖川有栖氏の作品では、わたしは江神シリーズはいい加減犯人も話の筋もトリックもうすぼんやり覚えているのですが、火村シリーズは難しいですね。
時系列ではないし、「主人公の成長」みたいなものがテーマでもないから、「あのときアリスがああした」とか「火村のこういった一面が垣間見れた」とか、そういうのがないんですもの。
その分、毎回新鮮な気持ちで、普通に驚きながら読むことができます。
なんて経済的。

もう少しページを進めたら、「朱美さん」が出てきました。
なるほど「朱」。
これでも思い出せません。
もう読み返すしかないですね、これは。

本の読み返しは、何度やってもいいものです。
話の筋を覚えていてもいなくても、何度でも読める本に出会えるというのは、幸せなことですね。

とはいえ現在別シリーズを再読中なので、火村シリーズ再読はまた今度になりそうです。
それもまたよし。

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