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サイアノ和紙作家雑記vol.36『ヒカリノトリ』観測&撮影/11.19.2023
考えるとか思うといった
感受レベルではなく、
なんか勝手に細胞が活性化した。
それがとても心地よくて、
よろこびを感じられた。
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現代社会では考えたり思ったりの順番。
事前に情報が植え付けられて、
想像したり期待するから行動を起こす。
もちろんそういったモノが
存在してもいいし、
特にエンターテイメントには必要だと思う
(僕自身、そちらの住人だと思う)。
マスをターゲットにすることで
いろいろな意味でのスケールは大きくなる。
わかりやすさから徐々に没入することで
辿り着ける領域もあると僕は信じている。
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でも、『ヒカリノトリ』は違った。
わかりやすいストーリーはなく、
いくつかの観測エリアに分かれているが、
すべてが断片的な印象。
よそ行きのアプローチの仕方では、
多分、チンプンカンプンだと思う。
ただ、とても暗かったり
物語化された情報も最小限であること。
それと、緩やかに導いてくれる
先人観測者たちの存在によって、
この世界に溶け込んでいけたと、
ファインダー越しに感じられた。
視覚や思考に制限が加えられることで、
人間が持つもっと根源的な感覚が
あらわれたように思う。
資料という呼び名で供される料理は、
素材が持つ味や香り、食感などを
存分に味わうことができた。
年代を超えて蒐集され散らばった言葉たちは、
メインディッシュの晩餐会場で
言語レベルを超えて昇華していった。
そして、合間合間に抽象度の高い演奏や映像群が
観測を進め次第に高揚する感性をより高めてゆく。
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エンターテイメントの世界のような
規模感ではないが、
ボトム側から立ち上がった表現世界としての
スケール感はとても大きい。
観測者であり撮影者として入ったので
より詳しく観察することができたからこそ、
この世界観の壮大さと崇高さに大いに刺激を受けた。
Don’t think feel
そう考えている時点で違うなと
どこか違和感を覚えていたが、
思考なんかよりも真っ先に
細胞レベルでよろこびを感じられた。
とても豊かな時を過ごすことができた。
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めぐりあるきレストラン
『ヒカリノトリ』
観測者たちの集い
2023.11.11 sat - 11.26 sun (週4回公演)
16時開場、17時開演、上演時間約2時間
会場 図図倉庫
福島県相馬郡飯舘村深谷二本木前5-1