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アラサー男性がモルカーと一緒に一人旅した話②


 こんにちは。懲りずに続きを読みに来てくださりありがとうございます。
 この記事は

の続きです。もし、以前の記事を未読でしたらリンクから飛んでいただけると幸いです。
 この記事は、アラサー男性の平凡な旅を、濃いめに味付けた文章で書き記すものです。ふぉとじぇにっく的な過度な期待はしないでください。




旅程



8月5日① 広島の朝


■6:10

 朝もやの街の中で、アラサー男性とバッグの中の2台のモルカーの決意は産声を上げた。
 曰く「今日は大移動デーである!お尻が痛くならないように頑張る!」と。

ここまでは広電で来た。

 宝剣、勾玉、銅鏡よろしく広島市内にも電車三種の神器がある。すなわち、JR西日本、広島電鉄、そして広島高速交通広島新交通1号線、通称アストラムラインである。
 このアストラムライン、いくつかの駅はなんと地下にある。

地下鉄みたいだね。

 ゴムタイヤが使われていて、シュイーンとスマートに進む。電車よりも運ばれている感が強い。なんかこう、引っ張られる感じ。とてもユニークな乗り心地。うむ、お尻の幸先はいいぞ。
 新白島駅でJRに乗り換え。この辺りから通勤の乗客も増え、街が動き始めたのを感じます。

朝だね。

■6:50

 いよいよ目的地が近づいてきました。次なる乗り換えの為に歩いていると、

朝日に照らされて、ぽつねん。

 交差点に取り残されている可哀想な蘭陵王を見つけました。ここにあるの有名だけどこんなに近寄っては見づらいものだったのこれ!?
 周囲をびゅんびゅん車が通り過ぎるだけの日々の蘭陵王……そりゃ毒杯呷るよなあ。南無。

ウェミダー

 朝の大移動のトリを飾るのはフェリーです。振り返ってみればこれが人生初の瀬戸内海でした。


8月5日② 宮島


■7:10

めっちゃ歓迎してくれる
黒と青空のコントラストが綺麗。
満潮寄り。9代目だそう。

 すごいですよね、大鳥居。そこにあったら変なのに、ここにあるのがしっくり来ます。デペイズマンさんがおらへんねん。現代の感覚でこういう建築をしようとしても、シュールさが際立ってしまいそうな気がします。知らんけど。

 ちなみにこの辺りからモルカーを帽子に乗せると安定して写真が撮れることに気づきました。
 大鳥居をバックにパチリパチリしていると、親子で交互に写真を撮っている家族を発見。ありがとう甲本ヒロト。私、優しくされたから優しくするよ。

 「お写真、撮りますよ」
 「いいんですか?ありがとうございます。ほら、〇〇ちゃんここ並んで」
 お母ちゃんに呼ばれて華麗にギャルピを決める娘っ子。両手で。将来はK-POPアイドルか。
 お父ちゃんの方は引きつった笑顔。
 そうだよね。お父ちゃんは見てたもんね。目の前でモルカーの写真撮ってたアラサー男性を、一般的に不審者って呼ぶもんね。

拝殿。
西廻廊。左奥は反橋。

 閑話休題。
 朝イチ厳島神社めっちゃオススメです。見よ正に伽藍堂。いや神社に伽藍堂ってまずいのだろうか。ただ、この時間でも元気なやつはいます。セミです。もうずーっとジーワジーワシャワシャワ鳴いています。後で録画見直したらセミの声が全方位音源ライブ並に鳴り響いていて笑いました。これが蝉しぐれちゃんですか。

厳島神社には併設の宝物館があり、別料金を支払うと見学出来ます。が、何よりもインパクトが強いのがこちら。

デカァァァァァいッ説明不要!!

 トトロの木かよ。かつて大鳥居の根元材に使われていた楠です。木をふんだんに使った建築って日本では特別珍しいものではないけれど、やっぱり贅沢で素敵なことだよね。
 宝物館の中は残念ながら撮影禁止。つまり私のトラベラーズノートが火を吹くぜッ!

 へたくそでなぁんもわからん。牛若丸はどっち向いとんねん。常盤御前(源義経=牛若丸、の母)の胸に本物の錠前が着いているというなんとも不思議な絵。由緒を解さないとすっげえ性癖だと勘違いしそう。しない?あ、そう。

 もうひとつ印象的だったのが、かつて存在した御供船(おともんぶね)。煌びやかな旗で飾り付け、船上で演奏する管絃祭という神事の際に華を添えたそう。一度お目にかかりたかったけど、"あの日"に全部焼失してしまったとのこと。ああ、そうだ。ここはヒロシマだった。

 それから、面白かったのは、宮島を描いた絵図は神社よりも自然を切り取ったものが多かったこと。プロフェッサーガホウ・ハヤシも松と海のコントラストが"映え"だから日本三景と称したワケで、宮島の本質は神社ではなく自然なんだろうね。知らんけどさ。

本土へ。


8月5日③ あなごめし


■9:20

 閉まってやがる、早すぎたんだ!
 宮島名物と言えばあなごめし。食い意地が先走ってしまい、まだ開店前の店前でぽつねんと立つマン・ウィズ・モルカーズ。近くで時間を潰そうと思い、歩き始めるその瞬間、ガラァと小窓が開かれた。

「お兄さん待って!食べてく?買ってく?」
た、食べます!
「ウェイティングリストに名前書いてくれれば9:45から呼ぶから、それまで待合室にいるか9:40くらいまで時間つぶしでおいで」

 や、優しい……!旅行で会う人会う人みんな優しいんですよね。いつの間にか人類は弱酸性ハンドソープにアプデされてたのかもしれない。そんなわけないか。おかゆかもしれない。

あなごめし(上)と一口ビール

 う、海の宝石箱や〜!!!
 いや、全部タイガーアイやがな。
 あなごはふっくら5段階中3、パリッと5段階4といったところ。甘塩っぱいタレとあなごの脂がよく絡まって、ご飯が進む進む。

 問題はペース配分である。あなご一切れでかなりの白米が進むので、欲望に従っているとすぐにご飯がお消え遊ばれる。
 かと言って、あなごだけで食べるのは違うのだ!おわかりいただけただろうか……もう一度ごはんいただこう……とはいかない。
 あなごめしをかき込む私の姿はさながら松重豊の井之頭五郎。でも、頭の中では谷川浩司vs.羽生善治ばりの頭脳戦が繰り広げられています。助けて村山九段。あなご、白米、白米、あなご、白米、白米、ビール、あなご……。

 そこまでして食べて美味しいかって?美味しいに決まってるだろ!相席したベテラン宮島トラベラーのご夫婦から「美味しそうに食べるねぇ」と言われてちょっと恥ずかしかった。

是倉いのは、「上野」といえば「鰻」の東京人

 さあ、パワーフルチャージだ。
 ここから1時間半、もってくれよ私のおしり。
 広島の旅2日目は、後半戦に続きます。


8月5日 雑記

■宮島のいきもの

 宮島港から厳島神社へは、海岸に沿ってぐるりと進みます。

シュトラウスが日本生まれだったら
「美しき青き瀬戸内」を作曲したに違いない。

 その道すがら、こんな看板を発見。

 まさかの潮干狩ってもおk。
 いや、ええんか?なんかこう、神聖なんじゃないの?
 百歩譲って潮干狩っていいとして、食ってええんか?調理するとしたら神前酒的なノリで酒蒸しがいいの?食べた次の日起きたら全身光ってるとかやめてよね。
 厳島神社に着くまで、そんなワケわかんないことをぐるぐる考える私。神社のくせに堂々巡り。
 あまりにも気になったので厳島神社の神職さんに聞くと

 「いや、別にええんですよ。この辺りではポピュラーやし」

 ええんかい。
 だったら私も一度は扱いきれぬ力に溺れてみたいわけで。

 「あ、そういうご利益とかは特に」

 ないんかい。


■おれは しょうきに もどった!

モルカーと一人旅行とか
狂気だろとか言ってはいけない。

 俗っぽい言い方をすれば、宮島はとにかく神秘的。フェリーで来るという道程も相まって、外から隔絶された特別な空間。ついつい、何か感傷に浸りたくなるそんな世界……。ああ、厳島神社観光も終えて本土に戻らないと……。
 などと、3mくらいの高さにふわふわと浮いた心に引っ張られて、体も体感3mmくらい浮かんで歩く。しかし、突然飛んできたパンチに付けられるというか、上から押し付けられて現実に戻る。
 パンチの正体はいずこに。ふと、地面を見やると"それ"はあった。

SHIKA

うんち!
鹿の、うんちの臭いである。
お巡りさんこいつです、私の浮かれた心を地面に叩きつけた犯人!

"ぬん"のステップは見せてくれない。

 宮島では鹿のうんちを綺麗に掃除してくださっているようだが、時は早朝。まだお掃除の人だって勤務時間じゃない。私だってこの時間からは働きたくない。
 鹿には人間界のルールは関係ない。
 あっちへこっちへ移動して、その度にぷりぷり"気つけ剤"を落としていく。豪胆な鹿になると、こちらにガンを飛ばしつつ目の前を横切りながら、ぷりぷりやる。
 こっちがお客さんなので家主たる鹿には文句は言えぬ。
 うっかりこんな駄文をここまで読んでしまう皆さまのことである。宮島でもうっかりをなさらぬよう、宮島探訪は足元にお気をつけてください。

■ ■ ■

 ここまで読んでいただきありがとうございます。前回と合わせると約7,500字程読んでくださったことになります。角川文庫に換算すると10ページとちょっとですね。京極堂シリーズだったらまだ中禅寺秋彦がウンチク垂れ流してるあたりですね。

 ここまで読んでしまってありがとうございます。人間は惰性の生き物です。どうせなので次回も読んでいただけると幸いです。ここまで読んでしまったあなたの事です。多分、次も読んじゃいます。

 それでは、次回の記事でお待ちしております。



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