新規事業のニーズの有無、どう確かめるか
アメリカテキサスオースティンに基盤を置く、スタートアップ Food on the Tableは、顧客と顧客の家族の料理計画と食材のリストを作成し、食材を最も最適に購入できるお店と繋ぐサービスを提供する。
このようなサービスの実現のためには、全国のお店と食材の(おそらく膨大な)データベースにおける維持保守作業が必要であろう。又、各家庭で想定される料理についての料理方法と食材をコンピューターアルゴリズムで適切に提案できなければならないだろう。
考えるだけで頭が痛くなるこの事業の始まりは、たったの1名の顧客であった。
システムなし。
最初の顧客が現れるまで、料理方法もお店もなし。
最初の顧客は、地域のスーパーマーケットや主婦のコミュニティで探した。潜在顧客(主婦)に出会うと市場調査を目的にした取材を行い、最後にサービスの販売を試した。
ほとんどの人は、見たことのない聞いたことのないサービスに加入するわけがない。
しかし、1名が現れた。
この一人目の顧客は、WEBやアプリのようなソフトウェアのユーザになるのではない。このスタートアップ(Food on the Table)のCEOから、毎週自宅訪問という超ハイタッチ支援を受けるのだ。
CEOは顧客と毎週スーパーに行き、顧客は何を買うのか、スーパーは何を売っているのか、顧客が家族のためによく作る料理は何なのかを毎週真剣に学んだ。
毎週顧客の買い物リストと関連する料理法を手渡しする。
最も大事なのは、毎週 9.95ドルの有料課金があったのである。
たったの1名のためのCEOの全力サービス、 9.95ドル/週の売上である。
極めて非効率。
これをリーンスタートアップという観点で見ると、ビジネスの成長モデルにおいて最も大事な仮定を検証しているプロセスである。
顧客を1名確保した後は、2人目〜3人目に拡張させていくのはだんだんやりやすくなる。1人目の顧客と同じお店の顧客をターゲットにし、同一スーパーにおいての販売食材の知識が増えていくのだ。
やがて、このような人力支援には限界が来るだろう。自動化に投資するタイミングだ。
このスタートアップはこのように今回せる仕組みの拡張にいつも集中し、結果オースティンを超え、全国レベルのサービス構築に成功する。
「リーン・スタートアップ 単行本 – 2012/4/12 ( エリック・リース) 」は、スタートアップにおいても最も危険な仮定、
そもそもこのサービスにはニーズがあるのか?
をテストできる学習過程について語る。
未完成、未熟なサービスを世に出すのは恐怖を伴う。だからサービスの完成度を高めるため何度もリリース日を遅らせる。
その素晴らしく仕上がったものが誰にも使われないものだとなるとどうする?
この本が紹介され、9年ほど経った今
リーン・スタートアップは時代遅れだ
との意見も聞こえてくる。
その根拠としては、現在のSNSの拡散スピードにある。
中途半端なものを出したところで、事業成長モデルの学習の前に、不評によってブランディングに失敗するという理由だが、
実はその回避策は既に述べられている。
試験運用の際のブランド名ど本格サービスの際のブランド名を変えるのだ。
使われないかも知れないサービス開発に全力でリソースを投下するか、それとも本当の顧客をいち早く確保して有効な学習を始めるか。