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まけるもんか

朝からわけもなく気が狂いそうになったので、ひとしきり悶々としたのち、どうにもならなくてシャワーを浴びて、熱いミルクティーをいれた。

そして、久しぶりにガブリエルをひと吹き。

深呼吸しながら自分を取り戻す。ゆっくりと、ゆっくりと。

小学校の音楽の授業なのだろうな、デ、デ↗ーデ↗ーデー↘ン、エレクトーンの低音の伴奏がときおり響いてくる。カーテンを開けても、工事中で紗幕がかかっているから部屋は薄暗い。だから、この数日はいったんカーテンを開けてもまた閉めて、白っぽいいつも同じ明るさのなかで生活している。


わたしはいたってフツーです、みたいな風を装ってなんとか生きているけれど、ときどきその化けの皮が剥がれそうになってどうしたらいいかわからなくなることがある。誰かの視線や存在を感じていればなんとか保っていられても、ひとりでいるときのほうが、べろんべろんいろんなものが剥がれていきそうになってとても危険だ。


負けるもんか、って心のなかでつぶやきながら、わたしはなにに負けたくないんだろう、とふと思った。わからない。わからないけど、とりあえず自分を鼓舞してるだけ。うんきっとそう。

朝の冷気のなか背を丸めながら駅まで走ったり、混雑した電車に乗ったりすることもなく、こんな時間に誰にも気兼ねせずにシャワーを浴びて、どんなカッコをしても誰にも咎められないなんて、どうだ羨ましいだろう。なんの制約もないんだ。だから狂ってる場合じゃない、と自分に言い聞かせる。


さて、粛々とおシゴトをしましょうか。


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