【フランスおいしい旅ガイド】ピカルディの地方菓子
フランス北部のピカルディ地方の郷土菓子をご紹介します。
土地の産物を使ったお菓子
○クレーム・シャンティイCrème Chantilly
家庭料理ではホイップクリームcrème fouettéeという。生クリームと砂糖を泡立て、好みの固さにしたもの。パリ北方の町シャンティイはガイドブックではイル・ド・フランスに入っているのだが、現在の行政区分ではピカルディー地方に属する。シャンティイ城Cahteau de Chantlillyは、16世紀に建設され、かつてコンデ公がルイ14世を招いて美食の限りをつくした晩餐会を催した。その饗宴の指揮をとっていたのが映画にもなった宮廷料理人ヴァテール。そしてそのヴァテールが考案したといわれているのがクレーム・シャンティイ。しかし、ルネサンス期にカトリーヌ・ド・メディシスとともにパリに来た菓子職人がすでに生クリームをエニシダの枝でホイップして用いていたともいわれている。
シャンティイ城でクレーム・シャンティイが食べられるのは、お城のレストラン(元の厨房)「Capitainerie:キャピテヌリー」と庭園の疑似集落にあるカントリーレストラン「Hameau:アモー」。試しにお城の売店でクレーム・シャンティイの資料があるかを尋ねたら、係りのおばさんは「あれはお城とは関係ないわ」とそっけない。レストランだけが、便乗してプロモーションしているよう。城の受付にあったアモーのパンフには
“Berceau de la Creme Chantilly(クレーム・シャンティイ発祥地)”
“Desserts a la Vraie Creme Chantilly(本物のクレーム・シャンティイのデザート)”と書いてある。
本家の作り方は、充分に冷やした生クリーム50gを冷やしたボールに入れてかき混ぜる。これにバニラシュガー20g、粉砂糖20gを加えてかき混ぜる。クリームの波形がハッキリしてきたら出来上がり。
○ピカルディー風フィセルFicelles Picardes
みじん切りにして炒めたキノコ、ハム、ベシャメルソースを混ぜてクレープで巻き、ベシャメルソースとおろしチーズをかけてオーヴンで焼いたもの。
○ガロパンGalopin
固くなったブリオッシュで作るフレンチトーストの一種。「小僧」の意。オルレアネ地方ではリンゴをパイ生地で包んで焼くブルドロの別名。
○ラボット・ピカルドRabotte
リンゴを折りパイ生地で包んで焼き、冷まして供するパイ。
○クール・ダラスCoeur d'Arras
中世の町アラスのハート型ビスキュイ。
キリスト教にまつわるお菓子
○アミアンのマカロンMacarons d'Amiens
マカロンはアーモンドパウダー、砂糖、卵白で作ったお菓子。フランス各地で作られる。アミアンのものは、13世紀後半に考えられ出された。ハチミツが入っているので、ねっちりとした歯ごたえ。
アミアンのお菓子屋さん「Douceurs & Gourmandises」で聞いた作り方は、アーモンドパウダー、砂糖を半々混ぜ、卵白を加え、ハチミツ、アプリコットのジュレ、リンゴのジュレを加えるというもの。出来立てはアーモンドの香りがすばらしい。日持ちは1ヶ月くらい。お土産物屋さんでよく見かける大量生産タイプのものは、甘いとアーモンドのオイルと、苦いアーモンドのエッセンスも混ぜるのだそうだ。
★マカロンは、パリ、ロレーヌ地方ナンシー、シャンパーニュ地方ランス、ポワトゥー地方モンモリオンやニオール、サントル地方コルムリー、アキテーヌ地方のサン・テミリオンやサン・ジャン・ド・リュズ、ベアルン地方ポーなど、フランス各地で作られるポピュラーな地方菓子である。
○ガトー・バチュGâteau Battu
北部の人たちが、結婚式とか洗礼の日などに必ず食べる、ブランデー風味のブリオッシュの一種。バチュとはフランス語で卵やバターをかき立てたという意味。その名のとおり、卵黄をかき立て、さらに卵白も十分泡立てて、発酵させたブリオッシュ生地を合わせ、オーヴンで焼いたもの。非常にやわらかな口当たり。アミアンのマルシェで見つけたガトー・バチュは、カステラの目を粗くして、ほのかに酸味を足したような味。ソンム県Abbevilleにはガトー・バチュ協会がある。
お祭りのお菓子
○ランディモルLandimolle(あるいはアンディモルAndimolle)
甘くないパンケーキ。2月2日のろうそく祝別の日に食べる。シャンパーニュ地方ではタンティモルTantimolleという。