【フランスおいしい旅ガイド】ノルマンディーの地方菓子
フランス北西部ノルマンディー地方の郷土菓子をご紹介します。この地方は、温暖な気候をいかした特産の乳製品をとりんごを使ったお菓子が多くみられます。
土地の産物を使ったお菓子
○トゥルグル Teurgoule
米、牛乳、砂糖、シナモンを合わせ陶器型で焼いたノルマンディ風お米のプリン。昔はパン屋の余熱で作っていた。また、冬にしか作らないお店も多い。お米のお菓子はフランスの伝統的な家庭のおやつメニューであり、地方ではとても人気がある。また、こういったお粥状のものは、人類が最初に食べたお菓子だといわれている。このお米が小麦粉になり卵が入ると、フランやクラフティとなる。テリネTerrinéeとも呼ばれる。
カーンのレストランで食べたものは、米のつぶつぶが残っていて、パンプディングのような感じ。牛乳で煮込んでいるので味わいはミルキー。一方、朝市のものはかなりよく煮てあるので、ねっとりとした糊状。注文すると、大きな陶器から、プラスチックの容器にスプーンですくい入れてくれる。
●カーンの朝市のマダムに聞いたトゥルグルのレシピ
牛乳 4L、米 2カップ、砂糖 2カップ、シナモン コーヒースプーン1/2杯
これを混ぜて、弱火で6~7時間煮る。表面に黒くこげた膜ができる。
○ミルリトン・ド・ルーアンMirlitons de Rouen
折りパイ生地または練りパイ生地で仕立てた小さなタルトレットに、アーモンドクリームを詰めて粉糖をふって焼いたもの。「葦の横笛」という意味の19世紀後半に流行したカフェ・コンセール、ミルリトンの名をつけたといわれる。オレンジの花の水で風味をつけたプティ・フールにもこの名がある。ルーアンのものはアバレイユに生クリームを入れてコクを出し、つやのある焼き上がりが特徴。
私はちょうど焼き立てを食べることができたのだが、アーモンドがふわっと香ってなんともいえない軽い味わい。
○ル・ビスキュイ・ド・メールLe Biscuit de Mer
海の男が航海中の栄養補給のために持っていったという塩味のビスケット。オンフルールの名物で、近郊でとれる上質な小麦と水で作られる保存食。魚料理と合うのだそうだ。大きな乾パンのような味。
○サブレSablés
日本でもお馴染みの小型のビスケット。もともとはノルマンディ生まれ。砂を意味する「サーブルsable」から転じた語で、小麦粉に固ゆで卵の卵黄、砂糖、塩1つまみ、バターを混ぜ、5mmほどの厚さにのばして型で抜き、オーヴンで黄金色に焼いたもの。
○ブリオッシュBrioche
バターを多く加えたパン。ノルマン語brier「つぶす」から派生した語。ブリチーズを使っていたため、あるいはブルターニュ地方の町サン・ブリュクの製菓職人が考案した(サン・ブリュクの住民をブリオシャンBriochinと呼ぶ)など語源に関する説はいろいろあるが、ブリオッシュが中世には存在していたノルマンディの地方菓子であることは確か。
○ファリュFallue
ノルマンディ地方ベサンのケーキ。小麦粉、バター、生クリーム、卵黄、イースト、シロップを混ぜ、固く泡立てた卵白をそっと混ぜながら加えて型に入れ、オーヴンで焼いたもの。
リンゴを使ったお菓子
○タルト・ノルマンディTarte Normande(リンゴのタルト)
練りパイ生地をタルト型にしき、くし形に切った生のリンゴを並べ、生クリーム、卵、砂糖などを混ぜた液体を流して焼いたもの。
これと似たようなタルトで、カルヴァドスでマリネしたリンゴをソテーして、アパレイユを流して焼いたものを、タルト・オー・シュクル・ディポールTarte au Sucre d'Yportという。
○タルト・グラン・メールTart Grand Mere(おばあちゃんのタルト)は、ブリオッシュ生地や練りパイ生地にクレームパディシエールを詰め、細かく切ってカラメリゼしたリンゴをのせて焼いたタルトレット。
○ブルドロBourdolo
丸ごとリンゴのパイ包み。フランク語源の古フランス語bihurder「冗談を言う」が語源。ピカルディ地方ではタリビュールTaliburまたはラボートRabotte(中世オランダ語robbe「うさぎ」から転じた語)、パリ近郊ペルシュではブールデーヌBourdaine「私生児」、オルレアンではガロパンGalopin「小僧」と呼ぶ。リンゴは皮をむき、芯を抜き、砂糖、アーモンドパウダー、卵黄、シナモン、ラム酒を練ったものを詰め、折りパイ生地または練りパイ生地で包んでオーヴンで焼く。
○ドゥイヨンDouillon(あるいはドワヨンDoillon)
洋梨を丸ごと生地で包んで焼いたもの。ラテン語ductilis「柔軟な」から古フランス語doille「やわらかい」が成立したのが語源。また、ドゥイヨンには僧侶や子供が着る綿入りの長いコートという意味もある。洋梨の芯をくり抜き、中に砂糖とバターを詰めて、練りパイ生地か折りパイ生地で包んでオーヴンで焼く。リンゴのものもドゥイヨンということもある(と本に書いてあるのだが、今ではリンゴの方をドゥイヨンと呼ぶことが多いようだ)。ちなみに焼きリンゴはポム・オー・フーPomme au Four。
○リンゴのクレープCrêpes aux Pommes
厚く焼いたクレープ。リンゴをバターで炒め、火が通りかけたら砂糖をふり、カラメル状にする。卵、砂糖、小麦粉、牛乳を混ぜてクレープ生地を作り、炒めたリンゴに注ぎ、両面をこんがり焼く。カルヴァドスをふりかけアルコールを飛ばし、生クリームをかけて食べる。厚いので火加減に注意しながら中まで火を通す。
○フォンダン・オ・ポムFondant aux Pommes
ケーキ型の底と周囲にカラメルソースをつけ、そこに薄切りのリンゴをたくさん貼り付け、バターのたっぷり入ったケーキ生地を流し込んで焼いたもの。
○ガトー・ヴェルジェ・ノルマンGâteau Verger Normand
古くなった固いパンとリンゴ、砂糖等を型に詰めて焼いた素朴なお菓子。
○ガーシュGâche
イーストを使った発酵生地にリンゴなどのフルーツを加えたフランス西部のパンケーキ、あるいは、小さなソフトタイプのガレット。ノルマンディでは熱いうちはバターをつけて、冷めるとシードルに浸して食べる。
○ノルマンディ風リンゴのオムレツOmelette Normande
家庭のデザート。砂糖で甘味をつけたオムレツにリンゴジャムか、バターで炒めたリンゴをはさんで焼いたもの。
コンフィズリ
○シュークル・ド・ポム・ド・ルーアンSucre de Pomme
千歳飴のような、10cm位の筒形をしたリンゴの飴。もとをただせば、ルーアンの学校に砂糖の講義をするためにやって来たスペイン人薬剤師ピエール・デュボックが調合した、あるいは彼の影響で砂糖に興味をもったルーアンの人が地元特産のリンゴと結びつけた、メランコリーに効く薬だったとか。その後1865年に、ルーアンの砂糖菓子職人が、小銃の形をしたものや1kg以上もあるステッキ状のものを作り、一般に広まった。