コロナとうつの関係

ご無沙汰しております。なかなかnoteを書く時間が確保できず、それなりに多忙な日々を過ごしていました。

相変わらず新型コロナウイルスの影響は続いていますね。個人的な意見ですが、なんとなく新型コロナウイルスに対する意識が「薄まった」というか、生活に「馴染んできた」という印象を持っています。
以前ほどメディアも騒がなくなったし、私の住んでいるところは感染者数も少ないためか、東京などの多い地域を見ても「増えたね~」くらいの感想しか持たないようになってしまいました。慣れというのは怖いものです。

そんな中、一部のメディアで「コロナうつ」と呼ばれるものが、流行りもののように扱われています。確かに、当院でもコロナの影響によるうつでの受診は増えています。
しかし、メディアの紹介の有り様が、さも特別な病気であるかのような取り上げ方をしているものを、少なからず見かけます。

そこで今回は、コロナとうつの関係について、当院を受診された患者の傾向を元にして、お話ししたいと思います。

いつもながら、あくまでも精神科病院の医事課員からの視点なので、学術的観点や批判的な「ウチの病院とは違う」的意見はご遠慮ください。

・事実、コロナの影響による受診は増加傾向

7月~10月前半までの、当院の新患のインテークを見ると、1割程度がコロナの影響によって受診に至っています。

確かに、コロナによるうつで受診される患者も増加していますが、同程度以上に、20歳未満、いわゆる発達障害での受診が増加傾向にあります。

インテークやカルテを読む限りでは、
「緊急事態宣言で休校になって、家でストレスが溜まって…」
「元々発達障害の傾向はあったが気になる程ではなかったが、休校でいつもと違う生活になってから…」
という感じの理由で状態が悪化して、受診に繋がったケースが多く見られました。

また、統合失調症やパニック障害、アルコール依存症の患者などでも、コロナの影響で増悪しているケースもチラホラ見かけました。
これらも含めて考えると、「精神疾患全般でコロナの影響が見られる」と言った方が、全体像をより正しく捉えているように感じます。

・「コロナうつ」の過剰解釈

ちょっと煽り気味な見出しですが、あながち間違いでもないと思っています。

私が見た限りですが、コロナうつは「コロナの影響でうつ状態になる」というザックリとした説明で、あたかも「感染拡大からうつになる」かのような報道がなされているのを度々目にしました。

しかし実際は、これも当院の受診患者からの傾向ですが、「コロナが流行してて、自分も感染するかもと不安で…」みたいな方は、私は1人だけしか見た事がありません。しかも、その方は医療従事者でした。

当院でのコロナによるうつでの受診は、
「コロナの影響で失職や自営業の不振で、これから先の生活が不安になり…」
「テレワークや休校で人と会う機会が少なくなり、孤独感が強まって…」
というような、非日常的生活環境が大きく影響しているように思います。また、芸能人の自殺報道が相次いだことも、うつ状態の発症や増悪に繋がったケースも何人か見かけました(コロナの影響かどうかは微妙ですが…)。

これらをまとめると、コロナうつというのは
「コロナの感染拡大による影響で生活環境が変化し、自身の心身のバランスがうまく取れなくなり、うつ状態に陥ってしまった」
と言った方が、ニュアンス的には会っているように思っています。

・「コロナうつ」と「災害うつ」は似ている

東日本大震災後に「災害うつ」と呼ばれる、うつ病やうつ状態の患者が増加しました。
災害うつとは、大規模災害後に大切な人やものを失った喪失感、避難所での慣れない生活環境から来るストレス、自身の努力とは裏腹になかなか進まない復興に対する虚無感などから発症するうつ病、うつ状態のことを言います。

これを見れば、コロナうつと災害うつはよく似ていますね。発症が増加する時期も、災害うつは被災半年後くらいからと言われていましたし、コロナうつの傾向と重なっています。

これらの特徴を踏まえると、治療法も同じようなものになる事が予想されます。

とあるDr.の話では、災害うつの場合、しっかり休養できる環境を整える(できれば入院)ことや、「頑張る」を抑える(「頑張れ」と言わない)ことなど、従来のうつ病治療をしっかりと継続して行う事が重要だと話していました。だとすれば、コロナうつでも同様の事が言えるのではないかと思います。

まだまだ収束する気配の無い新型コロナウイルスですが、これからの流行が予測されているインフルエンザが伴った「ツインデミック」が起こるのではないかと言われています。

もちろん、そんなものは無い方が良いに決まっていますが、分からないコロナだからこそ、何が起こってもおかしくありません。

だからこそ、今分かっている「マスク着用」「ソーシャルディスタンス」「マメな手洗い」「3密を避ける」といったやるべき事を、油断せず徹底する事が大切だと考えています。

身体の健康は、心の健康にも繋がります。皆さんが心身共に健康でいられるよう、とある精神科病院の事務室でそっとお祈りしています。

ありがとうございますm(_ _)m精神科の風評向上のために使わせていただきます。