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知らないおじさまの話

私の畑は、車で5分のところにある、
実家の敷地内。

母の介護の時は、1日に何度も、
施設に入った後、もちろん母亡き今も、
ほぼ毎日、通っている。

行く途中に、田んぼがある。
団地の1ブロック
一軒家が10軒以上は建つくらいの広さ。

時々、70代くらいのおじさまが、
作業しに来ているのだけど、

ちょっと他では見たことないくらい
荒れた田んぼで、とにかく規格外。

初めて見たら、ただ、雑草が生えてるように
見えるかも、ってくらい。

毎年、
田植えも、稲刈りも凄く遅い時期。
梅雨入りしてから植えてる年もあったり、
他人事ながら、気になっていた。

ある年は、田植えして成長し出したとたん、
通るたびに苗が消失していた。
半分近く、食べられてしまった様子。
(ジャンボタニシが話題になってた頃)


台風の風で、ほとんど倒れてしまったり、

水を張った田んぼに大量の水草?藻?
が発生していたり、

素人である私でさえ、
見るたびに、大丈夫?と思ってしまう…

毎年毎年、何かしらのトラブルに見舞われて、
田んぼの脇で呆然としている
おじさまを時々見かけたりもした。

初めの頃は、遠目に

「下手くそだなぁ〜」

と思ってチラ見していた。


でも、植えたばかりの稲が、
ほとんど消失した時は、
さすがに心が痛んだ。

秋になり、数少ない残った苗が成長して、
何とか米になっていたのを見た時は、
何だか嬉しかった。

そうやって、
私は見も知らないおじさまを、
稲作を通して注目しているうちに、
何があっても諦めないおじさまを、
応援するようになっていた。

今年も、お手伝いの方数人と、
稲刈りをしていた。

成長もまちまちで、稲の高さもバラバラで
合間合間には雑草も多くて、
どうみても、他の場所と比べたら、
個性的なおじさまの田んぼ。

稲刈り後の田んぼを見ると、
なんか、刈った跡も真っ直ぐではなくて、
何となくバラバラで、
植える時点で、バラバラなんだなあ、と
微笑ましく思った。


私が考える、おじさまの人物像はこう。

  • 定年後から唐突に始めた

  • 70代半ば

  • 必要な大型機械は知人から借りている
    その為、時期が遅くなる。

  • 行き当たりばったり

  • 無施肥、無農薬の可能性が高い

  • 打たれ強い

  • 家族には少し迷惑がられている。

  • 人の言う事に耳を貸さない。


今年の米は、どうだったんだろう?
見た限り、いつになく豊作の様子だった。


他では見ない、
足並みバラバラの、あの田んぼを見ると、

カッコつけないのがカッコイイ

なーんて思える。


トラブルがあると、自然には逆わず、
なすがままで、諦めもするのだろうけど、

米を作ること自体は、
決して辞めないおじさま。


今年もお疲れ様でした。
また、来年お会いしましょう。

(※TOP画像は、農家の田んぼ写真)

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