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小麦粉で私を思い出す友達

つい数日前、5年以上連絡してなかった
友達に連絡した。
携帯番号しか情報が無く、SMSで。

しばらくぶりだったし、
今時SMSとか、気が付かないかも。と
ダメ元だった。

ところが、矢のような速さで返事が来た。

昨日会った続きみたいに、
あっという間に、画面がメッセージで
埋まっていく。

まるで、これまで会わなかった時間を
埋め合わせるように。

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元気?
と家族の所在を少し報告したら、本題に入る。

彼女は、私がお菓子とパンの大量生産を
始めるきっかけを作った、その人なのだ。


この10年ほどは、
作ったものを"納品"していなかったのだが、
話題がパンとお菓子に及ぶと、

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まずはチーズ系ね、
あと、タルト。

       指定しないでよ。  
       こっちが作りたいものを    
       作るし。

嬉しいくせにー。
ニヤニヤしてんでしょ

       クソぉ、読まれてる…

食べてあげるから、
この10年の進歩を見せてくれ。
今日は、寝ずにでレシピ検索しなさい。  

       いつもしてるわ!

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10年前と、なんら変わらないやり取りが
そこにはあった。

今まで作ったものをたくさんの人に
食べてもらって来たけれど、

"食べてあげる"

と言うのは、彼女ただひとり。
高慢とも言えるその態度にひれ伏すのは、
ひとえに私がMだから…

ではなくてですね。

多分、私が何を求めているか、
分かっていて、食べたものの感想を
正直に伝えてくれる。

あげる↔︎もらう

と言う関係でありながら、
彼女は、私と対等でいてくれる。

もらったものは、
食べたレポートで返してくれる。
口頭だったり、
時には論文みたいな長文メールで。


ちょっとした材料の変更や、
失敗してうまく誤魔化したところに
めざとく気がつく。

そうだ。
私は誰かにお礼を言われる為に作って、
お裾分けしている訳ではなかった。
そんな時が確かにあった。

彼女との短いやりとりで
昔の自分を思い出していた。

彼女は、私を成長させる人なのだ。
今の私があるのは、彼女のおかげ。

調子に乗るから絶対に、本人には
言わないけれど。

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見慣れない小麦粉

彼女は、つい最近
スーパーで見慣れない小麦粉を見て、
私のことを思い出したらしい。

小麦粉を見て、私を思い出すなんて、
私も来るところまで来たもんだなぁw


いてもたってもいられず、翌日
その見慣れない小麦粉を調査しに行った。
小麦粉レベルが一般市民の彼女には、
珍しかったその小麦粉は、
小麦粉上級市民の私には知ってて常識、
な小麦粉だった。

自家製粉でも無い限り、
愛知県内で、知らない小麦粉などないと
自負している。


作ることに対して、
少し緊張感が生まれた。

10年の進歩を見せてくれ。
なんて言われたら…


あの頃より、娯楽は山のようにあるのに。

と彼女は言った。
私が変わらないでいたことを、
きっとニヤニヤしているに、違いない。

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