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シェイクスピア「ジュリアス・シーザー」(1599年)
シェイクスピア作品の中ではさほど有名ではない印象だが、なかなか面白い。
シェイクスピアはなぜジュリアス・シーザーを取り上げたのだろうか、と不思議に思っていたのだが、wikipediaに回答がそのまま書いてあった。
多くのシェイクスピア評論家と歴史家が、この劇が王権の継承についての当時のエリザベス朝イングランドの一般的な心配を反映していると考えている。すなわち、この作品が創作・上演された時期、イングランド女王エリザベス1世は、高齢でありながら、後継者を指名するのを拒否していた。そのため、彼女の死後、ローマと同様の内戦が起きるかもしれないという不安が持たれていた。
タイトルは「ジュリアス・シーザー」だが、実際の主人公はブルータスだ。彼が同僚のキャシアスに説得されてシーザーを暗殺、その後の顛末が描かれる。シーザーは比較的早い段階で暗殺される。しかし、最後まで物語の中心にいるのはシーザーだ。ブルータスをはじめとして、シーザー以外の人物は比較的地味だ。それは本作があまり有名ではない一因だと思うが、物語の展開上必要なのだと思う。そのあたりはおそらく作者も理解していたと思う。それは、後半、シーザーの亡霊が登場するあたりから推測される。亡霊が出てくる割には、そのあとの展開にさほど役立っていないのだ。物語が地味だから、亡霊としてでもシーザーを登場させて、劇に華を持たせようとしたのだと思う。
それはともかく、シーザーの死後、内戦がおこり、「ゲーム・オブ・スローンズ」みたいに、メインキャラがどんどん死んでいく。上記のwikiからの引用にあるように、エリザベス女王の死後に内戦が起こるのではないかという不安が反映されていることと、シーザーというカリスマの死後、ローマを牽引するだけの力がある人物がいない、という構図が重ねられているのだと思う。
本作は言葉の力が物語の進行を左右する。
ブルータスはキャシアスに言葉で説得されて、シーザーを暗殺する。そのあとで、ブルータスは群衆を言葉で説得し、暗殺を正当化する。そのときは納得した群衆だが、直後にアントニーという人物が演説をはじめると、ブルータスたちに牙をむく。
こういった言葉の力の面白さや怖さといったものが、本作の面白さだと思う。
登場人物はほとんどが既婚者で、それぞれの妻は夫を思いやってアドバイスをしたりする。夫たちは、妻に対して「お前の言う通りにしよう」と答えるのだが、たとえば仲間が「決断せよ!」みたいなことを言うと「もちろんだ!」といって立ち上がり、妻との約束は反故になる。ほとんどの登場人物が似たり寄ったりのやりとりをしており、こういうマッチョな感覚というのは時代性なのかなと思う。
シェイクスピアはやっぱり面白い。
昔はとっつきにくくて、読みはじめても途中で放り出したりしていたものだが、最近は翻訳が複数出ていて、自分が読みやすいものを選ぶことができるようになった。
これからもシェイクスピアは継続的に読んでいこうと思う。
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