共鳴する部位の配分
小学五年生の時に、学校のクラブ活動で吹奏楽に参加していた。
四年生から始めて、憧れのテナーサックスを、じゃんけんで勝ち取った。
重いテナーサックスを持ち帰ると、母は言った。
「オカリナとかの方が合ってるんじゃないの?」
果たしてそれは妥当な意見だったろうか。
当時オカリナはもちろん、フルートやクラリネットですら、興味は持てなかった。
私の声質は、まるでテナーサックスのようだと思う。
ある程度思い切って吹かないと、音が出ない。
共鳴する部位がおそらく似ている。
胸など低い位置で抑えるようなところから始めるのがよい。
そうでないと上擦った声、話し方になる。
私はそれがとても嫌なのだ。
低いところから始めて、伸びやかに高音域へと移るときに快感がある。
もとより高い声は出ない。
母はそれを理解せずに、小学生の頃の私の体型だけを見てオカリナをと言ったのだ。
ちなみに母は音楽に詳しいわけでもなく、学びを深めたことはない。
テナーサックスを吹いた経験は、歌をうたうに当たりとてもよいヒントになったように思う。
録音する時に、どんな共鳴のさせ方が相応しいかを模索する。
コーヒーのブレンドや豆の炒り方、元を辿れば生豆の処理の仕方のように。
私の声の出し方に、その時の気候・温度・湿度、体調、精神、感情と、諸々を感じて合わせて、基本の傾向を基準に選ぶ。
頭部などはメインには使えない。
私はハート辺りをよく鳴らすことが合っている。
身近な人が何でもわかるわけではない。
よく知っていそうな家族ほど、あてにならないものもない。
趣味があるのはいいもの。
自立への第一歩やったと思う。