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『短歌往来』2022年12月号

①「今月の視点」川本千栄「連作はどこへ行くのか」
はい、これは分詞構文、ニューヨークタイムズの弾むような文体 大松達知〈一首で読んでいた歌が、連作の中で読むと違って見えてくる。〉最近、一首完結の歌をある程度の数読んでも物足りなさを感じる。連作らしい連作が読みたい。

六月の雨の中なる野良猫よ鳴いても世界は何も変わらない 谷岡亜紀 誰が何をしても世界ってそう変わるものではない。野良猫に自分の無力感を重ねているのか。下句の四四・三五の、重く被さってくるようなリズムに惹かれる。

③武富純一「評論月評」桑原憂太郎の「現代短歌評論賞」受賞論文について〈発話の語尾を「モダリティ」なる聞き慣れない語で切り込んだのが個性的で斬新だ。「口語は文語と比べてここが弱い」ではなく「口語は文語と比べてこんなことができる」という立ち位置がいい。〉
 賛成だ。口語は文語と比べて助動詞の数が少ない、特に時間表現を表す助動詞が貧弱だ、系の論は今までに散々聞いてきた。忘れてはならないのは、言語は実際の使用によって変わってきたし、変わっていくということ。昔あったが現在では使われ無くなった要素は、それに代わる要素があったからなくなったのだ。人間の表現したいこと自体が減ったわけではなく、表現方法が変化したのだ。だからある部分が貧弱になったら、それを補う要素が豊かになっていると考える方が普通だろう。今後の文語口語論はそうした豊かになった要素に目を向けていかなければならないのではないか。

2022.12.16.Twitterより編集再掲