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『半夏生の本』vol.2 2020.11.

豚コマのパックの中に足首に巻ける長さの肉が三枚 おいしいピーマン おかしい。どうして豚コマの中の比較的長い肉を表現するために「足首に巻ける」ことを単位としてしまったのか。巻いてないけど、自分の肉の上に豚の肉を感じているようで少しヒヤリとする。

言いかけてやめるブーメランを実際に投げてる人を見たことはない 戸似田一郎 やめる、の後に大きな間がある。自分の言ったことがブーメランのように戻って来そうなので言うのをやめる。そして、そう言えば…と思い至る。ブーメランは常に喩で、実際に使用されるのを見たことは無かった。アボリジニの狩猟道具で鳥などを狩るものだ。狩猟というイメージより、戻って来るもの、そして自分自身を傷つけるもの、というイメージが強いのだ。

洗濯物とりこみながらぬるい風 浴びて、いま正気だよな、と思う 平出奔 ぬるい風、の後、半角空け。ぬるい風は決して気持ち良くないもの。一瞬自分の正気を疑う。日常生活が少しだけ揺れる瞬間。微妙なところを表している。

比較的胃に優しいという薬飲んでそれでも長すぎる夜 平出奔 「比較的~」というのは便利でよく使う言葉。ゆるゆる効いてくるだろう、と思って待ってるが、あまり効かない。充分時間はある、と思っていたが、逆にあり過ぎ、長過ぎる。痛みの引かなさ、孤独感が迫る。

⑤座談会 半夏生のトーク「短歌を続けてちょっと経った現在について」この座談会、面白かった。参加者の気負わない話し方がいい。新人賞に応募する話やツイートと短詩型の類似とか内容も興味深かったし、注がついているのも良かった。

2022.7.28.Twitterより編集再掲