『歌壇』2020年2月号
①遠い日を大西民子のあくがれし雨のユトレヒト、ユトレヒトの雨 島田修三 「アンダルシアのひまはり」を思わせるが、こちらはぐっと暗めの印象。どちらも韻律の美しさを味わえる歌。
②歌壇賞候補作品「ところてん」捨てるべき躰だらうか脱ぎ捨てれば透きとほる翅があるのだらうか 逢坂みずき 一首前に「蝉声忌」とあるので蝉や死がイメージされているのだろう。だからいっそう、この歌の身体感覚がまぶしく、瑞々しい。
③歌壇賞候補作品「おもき光源」歳月は憎悪を深くするのみか少女の一重まぶた重たく 坂井ユリ ここまで従軍慰安婦問題に正面から切り込んだ連作は今まで無かったのではないか。しかも自らの身体と性を通して詠っているので歌の力が強い。鋭い問題意識を包む、豊かな詩性。
2020.1.23.~24.