七/レージフリーク
響はミラノの地に降り立った。夕陽に照らされたロマネスク建築の波に、いつも畏敬と懐かしさをおぼえる。
初めてこの地を踏みしめた時も、違和感なく溶け込むことができた。第二の故郷。彼はミラノの街にアパートメントの一室を持ち、住人としての楽しみも味わっていた。
それは古びた建物だったが、味わいのある壁と最上階からの眺望は格別だった。歴史のある町並みを見下ろしながら、学生時代に培ったバーテンダーの腕で、自作のカクテルを作るのが最高の喜びだ。
彼はドアの前に立つと、呼び鈴を押した。ジジジという馴染みのない音が廊下に反響する。途端に待ち兼ねていたと言わんばかりに扉が開き、中から赤毛の男が飛び出した。
「ヒビキ!」彼の顔を見るや否や、がむしゃらに抱きついた。
「会いたかった!」
響と変わらない身長に赤いピンヒール。両肩の張った上半身にはパステルカラーのタンクトップ。ボトムにはワニ革のミニスカートを穿いていた。
「元気だったか、ルカ。おい、中に入れてくれよ」
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