なかはら真斗
18歳の古賀翔平は誕生日を境に奇妙な夢を見る。それは想像もつかない試練の始まりでもあった。崩壊した新たな世界で翔平は使命を全うすることができるのか。善と悪が混在した中で彼が下した決断とは。
義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目覚めた性に翻弄され、背徳の扉を自ら開けて行く悠真。恋人や親友が異変に気づいた時には、もう引き返せない場所にいて……。 禁断の拘束ラブストーリー。
天才ボーカリスト高階麗次の愁いに魅かれたモデルの響。 しかし、初対面でいきなり敵意を向けられてしまう。 彼は繊細な外見とは裏腹に予想外の「つわもの」だった。 野性的な響、クールなリュウ、知的な拓也。 それぞれの眠った感情が動き始め、思わぬ波紋を広げていく。 華やかで、甘くて、ちょっと過激な、ドラマティック・ラブストーリー。
【全7話完結済み】両親を殺された憎しみを晴らすため世界屈指の<癒し手>となったオプシディオ。しかし、最愛の弟は憎むべき相手<真の名を呼ぶ者>に仕えるという。幼少期から翔平に出会うまでを描いた<真の名を呼ぶ者>サイドストーリー。
3分以内で読めるショートショート集。 ぼくは、わたしは、おれは思う。 あの日みた白昼夢。 それは、すべて現実だ。
ちょっと呟き少ないと思いますが、訳アリでひっそりTwitter始めました。 https://twitter.com/macotonakahara?t=5qYhcESGH3MTIhdoUZEXMQ&s=09
なかはら真斗です。 昨年の10月下旬に父が老衰で、大晦日に姉(星ヒカル)がコロナで亡くなりました。正直言っ面食らってます。同人作家の姉のファンの方にはどうやって伝えればいいんだろうって、知らせてあげたいって思うけどTwitterとかHPとか入り方が分からなくて途方にくれています…
こんにちは。なかはら真斗です。オリジナル小説【真の名を呼ぶ者(改)】を全編掲載しました。2010年に発表したものを2021年に丸っと書き直しました。主人公の壮絶な試練を描いたダークファンタジーです。よろしかったら読んでみてください。 https://note.com/chizu_yonemoto/m/m4e98d945c2a0
私は厩で愛馬に鞍を乗せていた。 翔平が居なくなってから僅かしか経たない。それでも世の中はブロジュを中心とした新たな世界へと再建に全力を尽くし、民も一丸となって光を取り戻そうとしている。 それを見るのが辛い。彼はもう二度と戻ってこない。それを突き付けられている様で、受け入れるには時間がかかった。 旅に出よう。そう思った。誰も知らない土地へ行こう。今はそうする事で平常心を保つのが精一杯だった。 見送りはするなときつく言っておいた。私にとってはそんな旅じゃない。 しかし、連中はそ
「代償、代償とうるせぇ……」 アンクーは唇に流れた血玉をぺろりと舐めた。 「これで満足か、古賀翔平!」 奴は身を乗り出して叫んだ。そこには清々しさすら感じる笑みを浮かべていた。 「これがあらゆる憎悪を引き替えに手に入れた世界。オレ達で作り上げた世界だ。そうだろ、翔平!」 恨み、憎しみ、支配、忠誠、偽り。あらゆる感情を目の当たりにしてきた。そして、最後に残ったのは、血生臭い世界。 こんな世界など望んではいない。ボクはただ、支配のない自由な世界にしたかっただけ……そのはず
「ラカンカ!」 ボクは咄嗟に崩れ行く彼の身体を支えた。すると、すでに虫の息だったラカンカは「これを……」と、妖霊の書をボクの胸元に押し付け、だらりと両手を落とした。 走り寄ってくるオプシディオの姿が見える。ボクの視界は真っ暗になり、妖霊の書とラカンカを抱え、戦慄く唇から言葉を漏らした。 「ラカンカ……ラカンカ……」 辺りには中庭に攻め入った騎馬の足音が聞こえる。オプシディオがボクに何かを言っているのが聞こえる。だけど、ボクはうわ言の様にラカンカを呼び、癒し手に押しのけら
もう、誰もボクに構わないでくれ。これ以上、闇から引きずり出さないでくれ。たくさんだ。このまま、眠らせて……お願いだから……夢の中にいたい。バージの夢だけを見続けていたい。邪魔しないでくれ。お願いだから。 苦しい……。 せめて、夢の中だけでも、安らかな時が欲しい。 父さん、母さん、容子。みんなの笑顔が蘇る。 会いたい。ボクはここだよ。忘れない。みんながボクを忘れても、死ぬまで忘れない……。 「翔平……」 ボクを呼ぶ声……。 柳瀬?ボクの大事な友達。おまえだけだった
ボクは呻いていた。信じられない事にまだ生きている。体内に流れるのは氷河。ここは黄泉なのか……それとも……。 手首に鋭い痛みが走った。枷が手首に食い込んでいるのが分かる。微かに腕を動かすと鎖の擦れる音がした。 天井に吊られた両腕に今更ボクの重みがのしかかる。だけど、そんな事はもう、どうでも良かった。 民に憎まれ、バージもいない今は、生きる意味などない……漆黒の水面を揺蕩う。このまま眠る様に死ねたら……。 ただ、もう一度バージに会いたい……ボクの使命を最後まで見届けると
墨色の煙が霞んだ夕空に上っていく。解放を終えた書を書庫の前で燃すことで一日の使命を終える。 もう、幾日すぎただろう。早朝から夕暮れまでひたすら解放の術を唱えた。ボクの証は腫れ、真の名を辿る指先の皮も薄く捲れている。 奴は一日の解放を終えると再び枷を嵌め、ボクを屋敷へと連れて行った。そして、まるで人形の様に風呂に入れ、ボクの髪を愛でながら、ゆっくりと櫛で梳いた。 一度「変態……」と、言ってやった事があった。すると、平手が飛んできて、立ち直れない程の屈辱を与えられた。
ズッズッズッズ……。 頭骨に響く音。背中や後頭部がごつごつとした地面に擦れているのが分かる。誰かがボクの両足を持って引き摺っている。顔も節々も全身が痛む。薄らぼんやりとした視界に闇夜が広がる。これは夢なのだろうか。月が夢想の飾りの様に見える。 ボクは朦朧としながらバージの灰色の目を思った。倒れる間際に見せたあの目を。夢ではない。まやかしだったらどんなに良かっただろう。今はただ、眠る。全てを封印してしまおう。どんなに現実を塞いでも何も変わりはしないのだから……。 ボクは
城壁の外で有象無象が犇めいているただ中に、ボク達は突っ込まなくてはならなかった。奴らは殺気立った眼を向け、牙を、爪を広げて待っていた。 しかし、何よりもボク達を驚かせたのは、城門の際に数本の棒が立ち並び、そこに仲間の同志が晒し者の如く括りつけられていたことだった。 「バージ、同志が!」 彼らは一様に項垂れ、遠巻きでも分かるほど、ボロ布の様な姿になっていた。その中には、間違いなくニコレッタも居た。その周囲には異形のモノが爪を立て、生贄を切り裂かんと薄ら笑いを浮かべている。
夜も白みがかる頃には妖霊達の姿はなかった。ボクらはジェラとライゾを呼び、黙々と屋敷へ向かう準備をした。覚悟は出来た。武者震いだけが全身に伝わる。 ジェラに跨り、一気に丘を下った。人気のない民家の狭間を抜け、石畳を駆ける。ジェラの爪音だけが朝靄の広がる冷たい空気の中に反響した。 すると突然、道の左右から民が数人飛び出してきた。待ち伏せしていたのだろう、ボク達の行く手を阻み、手にしていた鍬や斧を構えた。 それは余りにも唐突で、全力疾走していたジェラは速度を緩めることなく跳
「オプシディオ、翔平を眠らせろ」 ブロジュは呆然と立ち尽くしていた癒し手に言った。バージが突き付けた切っ先は喉に食い込み、微動も出来ない。ここで眠らされたらなにもかも終わりだ。どうする、翔平……。 「軟禁もやむを得ん」 そう呟く老魔術師にオプシディオは軽く首を振ったが「悪く思わないでくれ」と、ボクに歩み寄った。 「兄貴!」 八方塞がりだ。この状況を脱するには術を使うしかない。だけど、彼らを傷つけずに突破する事は可能なのか。あらゆる思いが高速で駆け巡った。 しかし、それ
ある日、ミオが珍しく屋根裏にやって来た。為す術もなくベッドの上で膝を抱えていたボクに向かって、突然彼女は言い放った。 「いつまでそうしてる気なのよ。あんた当主でしょ?みんなに守られてばかりで何もしない。苦しいのはあんただけじゃないのよ。こうしている間も、ラカンカはあんたの犠牲になってる。分かってんの?何かしなさいよ。何でもいいから!」 ボクは顔を上げた。触れられたくないこと。触れられても答えの出ないこと。全てを見透かされている悔しさと腹立たしさで、心の奥底から震えが湧き立
ボクは目覚めた。木の梁がある天井は見知らぬ物で、ランタンの明かりがボクの顔を照らしていた。全身に鉛の重みを感じる。どれだけ眠っていたのだろう、喉は渇き、じっとり汗が滲んだ。 「どうですか、気分は」 いきなり横合いから顔を覗かせ、ボクに微笑みかける人物がいた。吸い込まれる様な翡翠の眼差しに一瞬にして心臓が高鳴った。肌は陶器を思わせ、長い金髪を後ろに束ねている様は慈愛に満ちた女神を連想させる。それら性を超越した容姿が幻に見えて、視線を外す事ができなかった。 「驚かせてしまった
──翔平。あなたに新世界の再生を託しました。あなたにしか出来ない事がきっとあるはずです。それに従い、全てを終えるのが、あなたの生まれながらの使命。 ボクの中でその声は聞こえた。そして、それだけを残し、奥底へ落ちるように消えていった。 漸くボクの身体はボクのものになった。目の前には変化の一部始終を見ていたバージの灰色の目があった。彼はボクの二の腕を握っていた手を離し、刹那視線をずらして目を閉じた。 彼が何を考えているのかまるで分らなかった。そしてボクもまた、嘘のように平常