四 硝子の向こう側/アルカナ眠る君に噓はつけない

 冷静で品のある顔立ちと後ろに撫でつけた髪。仕立ての良いスーツに身を包み、一糸乱れぬ姿でやってきたのは、あの仁だ。広い肩幅も、それに伴う身長も、スーツを着る為に作られたと言っても過言ではないくらい、見事に調和していた。 
 平然と近寄ってくる義兄を一心に見つめ、悠真はなんとか言葉を絞り出した。
「し……書類を、持ってきました」
 彼はそれを直視しているだけで口を開かなかった。颯爽と上着を脱ぎ、空いた椅子に放り投げる。

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2,753字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目…

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