六 利害の一致/アルカナ眠る君に噓はつけない

 悠真は何かに突き動かされたように飛び起きた。そして、静寂の中、暫く微動もせずに呆然としていた。身体が凄まじくだるい。まだ夢中を彷徨っているかのようだ。
 部屋には太陽光が射していた。ブラインドの隙間から漏れたそれは、床に幾筋もの光の帯を映している。
──ここは……。
 悠真はぐるりと周囲を見回すと、ガラスの壁に映った自分に「わ!」と、声を上げた。その途端、勝ち誇った義兄の顔がフラッシュバックした。赤面せずにはいられない明りの消えた隣室。彼らの姿は当然の如く掻き消えていた。
 彼は未だに鮮明さを欠く頭を振り、両手の拘束が解けているのを確認して猛然と動き出した。切断された結束バンドがシーツの上に生々しく放置されていた。しかし、それに安堵する間もなかった。なぜなら脱いだ覚えのないジーンズがベッド脇に放られ、自分は惨めな下着姿になっていたからだ。

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3,330字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目…

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