二十 アルカナ/アルカナ眠る君に噓はつけない

「どうしたの。やる気んなってんじゃん」
 智樹は大学のアトリエに立ち寄り、石膏まみれになっている悠真に言った。繋ぎの作業着や手の甲にも白いひび割れができている。
「遅れを取り戻さないと。締め切りまで眠れそうにないよ」
 そう言って振り返った親友に智樹は絶句した。その笑顔は晴れやかさを押し殺す霞がかり、涙袋が浮かぶ妖艶な目は魔性を帯びていた。
「なに?」
 いきなり無言で凝視され、悠真は照れくさそうに苦笑した。
「いや……フィレンツェはどうだった」
 また何かが変わった。智樹は彼の目に新たに生まれた妖光のようなものを疑問に思い、熱心に見つめた。

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2,444字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

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