七 奇妙な感情/アルカナ眠る君に噓はつけない
悠真はちょうど昼時の大学構内で、朦朧とベンチに腰掛けていた。漸く日常に戻っても、気持ちはまだ異界の地にある。
気にかかることが多すぎた。あの睡眠薬には眠りの他にも重要な何かが含まれていたような気さえする。こうして美紅に会う為に来たはずなのに、到着した途端に自分に歯止めをかける奇妙な感情もあった。
「おい、どうした」
視界の中にゆるりと現れたのは智樹だった。いつものように両手をパンツのポケットに突っ込み、重い靴底を踏み鳴らす姿がやけに懐かしく感じた。
「あれ、家に帰ってね