最高のチームで最高の結果を手に入れる「アクションラーニング」
近年徐々に注目を集めつつある組織における問題解決の手段としてアクションラーニングという手法があるのはご存知だろうか。チームにおける問題解決の手段はすでに出尽くしたと思われていた中で脚光を浴びつつあるのが、このアクションラーニングである。
日本におけるこのアクションラーニングの提唱団体「特定非営利活動法人日本アクションラーニング協会」によるとアクションラーニングの効果としては次のようなものが期待されるという。
アクションラーニングの効用
【問題解決と個人の能力開発、組織開発を同時にできる】
現代における解決困難な問題に対して、個人のパフォーマンスを最大限に高めつつ、チームワークによって得られる結果に注目したこの学習法は、チームが共有する知識の底上げを図ることもできる画期的な方法である。
しかしその歴史は意外にも古く、1930年代、当時のケンブリッジ大学の物理学者であったレグ・レバンスにより開発・提唱された。その後イギリスを中心にしたヨーロッパを始め、アメリカなどでマネージャーやリーダーシップの育成時に用いられ、現在は世界アクションラーニング機構がアクションラーニングコーチの育成と展開を行っている。
日本においては、2006年に清宮 普美代氏により『特定非営利活動法人日本アクションラーニング協会(以下、JIALとする)』が設立され、同協会が主に管理職研修、リーダーシップ開発研修ツールとして企業における人材育成を支援を行っている。
チームにアクションラーニングを取り入れるべき理由
~個人から組織まで幅広く対応~
現在、企業のみならず、人は多くの解決困難な問題に直面している。それは、従来の手法が通じなくなってきた現在の社会構造にある。
人間関係のあり方は変わり、労働環境も「長時間でも働けば良い、強者に従え」等の風潮は時代に合わなくなってきた。また、「コンプライアンス」の拡大解釈から、よりいっそう企業は窮屈な中での活動を強いられる事となった。
インターネットの普及により効率は良くなったが、会話不足から新たな問題も生まれはじめた。そんな中で新たに取り入れられつつある手法がこのアクションラーニングである。
JIALでは、こうした社会の実情を踏まえながら、組織が抱える複雑な問題を明確にし、問題を解決する新たなリーダーの育成に取り組んでいる。社会のめまぐるしい変化に素早く対応できるパフォーマンス性の高いチームと、この新たなリーダーの育成・確保は企業において喫緊の課題でもある。
アクションラーニングでは、良質な質問が最大のテーマとなり、質問の素となる疑問や不明瞭な部分こそがチームにおいて最大の学習材料となる。そのため、具体的な意見や疑問ほど感謝・歓迎されるところが重要なポイントでもある。さらに、チーム全体の認識や学習する力だけで無く、他者への敬意や配慮が確実に上がる点も期待されるので、組織作りという点において非常に有効な手段と考えられる。
しかし一方で、間違った理解のもとで進めると効果が無いばかりか、チーム崩壊の可能性すら出てくるので、その運用は慎重に行わなければならない。なぜならば、今まで見つからなかった問題を見つける事は非常に困難だからだ。
また、問題点を見誤ると予期せぬ方向へと議論が進んでいくため、アクションラーニングリーダーは常にその議論の方向性を見定める俯瞰力が必要である。そのため、運用の際は、JIALの取り組みについてしっかり学び、受講するなどの指示を仰ぐ必要もある。
アクションラーニングの実践事例
ここで、JIALのプログラムを取り入れた企業の中で最も優れた事例(JIAL Excellent Action Learning Program Award)だと紹介された各取り組みの中から、非常に明確かつ大規模に取り組んだ2社について紹介したいと思う。
【株式会社 日立情報通信エンジニアリング (2016年 受賞)】
■問題と取り組み、その結果
株式会社 日立情報通信エンジニアリングの問題点は、合併後のシナジー(相乗効果)がうまく機能しなかった点にあった。検討の結果、問題の本質は、合併による意識のずれ・一体感不足にあるという認識に至った。そこで、アクションラーニングを用い、所属や職位、勤務地等が異なる社員が集まり、情報交換や事業課題の討議ができる場を設置する事とした。事前に参加者各人の事業を取り巻く環境や課題を明確にし、アクションラーニングコーチを加え、2回(1回70分)のセッションを行う。その結果、事業部・職位が異なる者の交流を通じて他者・他業種への理解が進み、さらにアクションラーニングコーチのリフレクションを促す質問により自社で常識と思っていたことが外部から見れば普通ではないことが分かった等の前向きな意見が得られた。
■筆者の感想
共通理解の無い相手とのコミュニケーションは非常に難しいことは周知の事実であるが、時としてそれを忘れる事もある。今回のセッションを通じ、想定外の質問の存在や認識不足が明らかになる事で「質問すること・されること」に対するある種の抵抗感が減少したのでは無いかと思われる。また、他者の考えを知る事で、自分の常識を越えたアイデアを手に入れる等の派生も期待される。
【キリンビール 質問会議プログラム(2010年受賞)】
■問題と取り組み、その結果
キリンビール は、チーム力アップを目的としてアクションラーニングの導入をすすめた。一人ひとりが考えて行動し、現場の意見が経営に反映されるような組織風土へと変革するためだ。その取り組みの特徴は、AL体験者を中心とした質問会議を通じて、社内アクションラーニングコーチ(リーダー)を育成するところにある。また具体的な実施後の効果を見ると、「関係性」や「意思疎通」等、内面的な改善が見られ、認識を共有する事で、より充実したプランニングができるようになったという具体的な成果もあがっている。
■筆者の感想
特に、ここでの興味深い点は、問題提示者とメンバーとして参加した者の感想を分けて分析している点である。提示者は「問題は抱え込むべきでは無く、解決手段はチームにある」と感想を述べ、メンバーとして参加した人によると「効果的な質問こそが最も重要な本質であり、問題に気づいた事で行動に移す事で主体性を感じるようになった」という。それぞれが問題の本質に向き合い、個人で抱え込まず、チームとしてそれぞれが役割を主体的に担い成功へと導くという点で非常に素晴らしいものであったと言える。
最後に
この2社の共通点は、アクションラーニングを通じて「学習する組織」となった点にあるのでは無いだろうか。
一見複雑そうに見える『問題の本質』を想像し、明らかにする訓練は個人の学習能力(問題解決能力)を向上させる事につながる。またそうした訓練はレベルの高いリーダーの育成やチームを形成し、社会のあらゆる変化に対応できる組織作りへと寄与する。
知識と経験を備えた社員や組織に対して『刺激(アクション)』を加える事は、シナプス伝達のようにいろいろな効果が期待される。「見方を変えてみよう」という号令だけでは『問題の本質』は見つからない。見る人が変わらないからだ。
アクションラーニングは、デジタル環境の整った今こそ不可欠な要素・視点ではないだろうか。
おまけ
これ、課題として書いたものなんだけど・・・・一体誰宛!?って思う内容で自分でも驚く。
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