本日、色節なり
羽田発-福岡行の飛行機を待っていた。
上京してもう何年も経つ。こうして搭乗時間まで、お土産巡りで楽しむことにも慣れたけれど、今日は違う。
「緊張してきた……」
何度目か分からない呟きに、彼氏はけろっとして笑う。
「そんな緊張せんでもええやん」
普段と変わらぬ様子の彼。むしろなぜ落ち着いていられるのだろう、と不思議になる。
福岡に着けば、数時間も立たないうちに初の両家顔合わせが始まる。入籍を控えた私たちの、最後の関門とも言えた。互いの両親には会っているが、両親同士の馬が合うかは会ってみなければ分からない。
「父親同士がケンカでも始めたらどうする?」
「そん時考えればえーやん。悩んでもしゃーない」
人は悩むことが好き、とどこかで聞いた。多分、私も例に漏れない。そういう時、合理的で推進力のある彼の言葉がいつも私を支えてくれる。彼で良かったと安心できる。
天気は晴れ。
海の向こうで、美味しいお酒とご飯が待っている。