怖くない、大丈夫
私に逃げ場は無かった。
ベルトで体をしっかりと固定されているからか?
いや、違う。
緊張のあまり、全身が強ばっているからだ。
友人は私のことなんて気にも留めずに写真撮影に夢中になっている。
「あれ? なんか表情固くない?」
友人が次々に私の顔を覗き込む。
きっとその通りに違いない。
これは、高所恐怖症の私にとって、命を懸けた初体験なのだから。
「さん! にー! いち!」
友人のカウントダウンに合わせるかのように、巨大な鉄の塊が轟く。
数センチ隣にいる友人の声さえもかき消すほどの轟音。
腰から上がシートに押し付けられたのはほんの一瞬。
その後、心臓がふわりと宙に浮いた。
周囲から湧き上がる歓声と拍手。
先程まで私を蝕んでいた緊張感は嘘のようになくなり
気がつけば友人と共に手を叩いていた。
行き先は、沖縄。
高校生活で一番の思い出を作るため
2年4組一同は大空へと羽ばたいた。
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