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【イベントレポ】18周年記念!これからの地方と都市とは?前編

創業以来、地方との連携に取り組んできたちよだプラットフォームスクウェア。18周年を迎えた今年10月、豪華なゲストをお迎えして周年記念イベントが開催されました。

トークセッションとグルメセッションの二部構成をとり、各界のトップランナーをお迎えした超豪華な4時間となりました🌟

トークセッション

『里山資本主義』著者である藻谷浩介さん、『日本列島回復論〜この国で生き続けるために』著者である井上岳一さんをお招きし、それぞれの講演を興味深く聞きました。

藻谷浩介さん

地域エコノミスト 株式会社日本総合研究所主席研究員
1964年、山口県生まれ。地域エコノミスト。株式会社日本総合研究所主席研究員。平成合併前3,200市町村のすべて、海外114カ国を自費で訪問し地域特性を多面的に把握。地域振興、人口成熟問題、観光振興などに関し、精力的に研究・著作・講演を行う。著書に『デフレの正体』『里山資本主義』(KADOKAWA)、『完本・しなやかな日本列島のつくりかた』『観光立国の正体』(新潮社)など。近著に『東京脱出論』(ブックマン社) 。

藻谷さんが大事にしているのは事実把握と構造把握。社会通念と異なる〝事実〞を指摘した著書『里山資本主義』は今も読み継がれるベストセラーです。

今回のご講演でも、日本の〝事実〞をクイズ形式で伝えていただき、参加者は楽しく事実を知ると同時に、認識のズレにハッとさせられる機会となりました。

クイズの答えを考える入居者たち

「日本の田舎に注目しないとおかしい。世界の最先端だから」

日本の輸出額やGDPなどの数字に関するクイズから始まり、いよいよ話は日本の地方に及びました。

日本といえば、課題先進国。高齢化率は世界トップです。
しかし、「一周回って再生の道が見えている」と藻谷さんは言います。

藻谷さんのグラフからは、世界でも70歳以上の人口が急増している現実を知ることができました。そんな中、一歩先をゆくのが日本。70歳以上の人口は実は横ばいなんです。

さらには、高齢者の人口が減り、少子化も止まっている場所が日本にはあります。

高知県の山奥の大川村!!

こうした地方は“年寄りのなり手”がいないので医療福祉負担は減り始め、余った資金は例えば子育て支援に充てることができる。暗い話ばかりではありません。「日本の田舎に注目しないとおかしい。世界の最先端だから」と藻谷さんは言います。

何に投資をするか

他にも様々な数字を見ていく中で、日本の田舎は世界的に見ても希望の星かも?と、イメージがガラッと変わりました。

そんな中、イベントに参加しているのは東京のシェアオフィスで働く入居者たち。最後に藻谷さんはこう語ります。

「資本に投資して循環再生させると利子がつく。それはお金だけでなく、人やもの、農産物なども同じ。どれも資本であり、投資すれば利子が返ってくる。そして東京には自然はないけれど、人と情報とモノへの投資をすることができる。

私たちが何のために東京にいるのか?何に投資しているのか?について、改めて考えさせられました。

井上岳一さん


1969年神奈川県藤沢市生まれ。林野庁、Cassina IXCを経て2003年から日本総合研究所。豊かな山水の恵みと人の知恵・技術を生かした多様で持続可能な地域社会をつくることをミッションに研究・実践活動に従事。著書に『日本列島回復論』(新朝選書)、共著書に『MaaS』『Beyond MaaS』(共に日経BP)など。内閣府地方創生推進アドバイザー。内閣府規制改革推進会議専門委員。南相馬市復興アドバイザー。東京藝術大学非常勤講師

コンヴィヴィアリティとは?

今回のイベントのテーマにもなった、コンヴィヴィアリティ。哲学者のイリイチの言葉で、「自然とともに生きる喜び、制度に隷属せず自主的創造的に生きること、協働・共創(=集合的創造)による祝祭」を意味します。

イリイチは「コンヴィヴィアリティのための道具」という著書で、大量生産社会によって人間の自律性が損なわれているという内容の批判を展開しました。

コロナ禍で注目された「コンヴィヴィアリティ」

井上さんは、コロナ禍でこの言葉が注目されるようになったと言います。なぜでしょうか?

それは、コロナ禍によって消費的で受動的に楽しめる非日常の場が失われたから。それを機に、日常の中に主体的な楽しみを見出す人が増えたと言います。

例えば、愛知県岡崎市の籠田公園はコロナ禍の自粛期間をきっかけに、市民の憩いの場として賑わうようになったそうです。

今は「日常」「暮らし」「地元」が価値を持ち始めた時代。この流れは、経済的資本が幅をきかせてきたコロナ以前の時代と比べると、地方にとって追い風の時代だと言います。

日常の価値を再発掘した、神奈川県唯一の過疎地域

実際に、何気ない「日常」を捉え直し、新たに価値を再発掘したことによって、新たな変革を起こしている地域を紹介していただきました。

紹介いただいた地域の一つ・真鶴町は、神奈川県で唯一過疎地域に指定されています。そんな真鶴には、バブル期に持ち込まれたマンション開発計画に対して「美の条例(美の基準)」をつくり、町の景観を守ったという歴史があります。

再開発ブームにのらなかったので、地域の衰退につながったようにみられることもあり、一時はその条例が攻撃されることもあったそうです。

しかし、2015年から“泊まれる出版社”として、出版物を発行しながら宿泊施設を運営している「真鶴出版」が美の基準を再評価し、再出版しました。

実際にサイトから購入することができます

実際に、真鶴出版を通じて移住した人は60人以上!
条例が制定されたことによって、町は変わらなかった。しかし、その変わらない町並みや日常が再解釈されることで価値に変化した、面白い事例です。

自律と共生。そのプラットフォームとしての"山水郷"

最後に井上さんは、「山水郷」という考え方を教えてくださいました。

山水郷とは?
地域というものを自治体の枠にとらわれない集合的なアイデンティティを持った領域としてとらえることで、山と水と郷という関連した自然資源をプラットフォームとして活用し自律共生していくという考え。

「山水郷」は、生きる上で必要な自然の恵みや人の力に注目した井上さんが造った言葉です。
一見当たり前に思えますが、今この時代に改めて刺さる言葉だと思います。

山水郷のポテンシャルに光を与えるべく、山水郷に根を張って生きるデザイナーやクリエイター達の物語を井上さんがホストとして紹介している「山水郷チャンネル」もぜひご覧ください!

ここからは対談と、グルメセッションに続きます!

後編はこちら

ちよプラとは?

ちよだプラットフォームスクウェア(通称ちよプラ)は、様々な世代と地域が共創しながら新たなビジネスや文化を生み出していくシェアオフィスです。フリーアドレス制/個室制のオフィス入居・会議室の貸し出しを行っているほか、旬の野菜を育てている屋上庭園や周辺の中小ビルと連携した別館「ANNEX」、"人と事業と文化がそだつビル"「錦町ブンカイサン」など、常に変化し続ける環境づくりを進めています。


                            (文:市村

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