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【ドラマ感想】会話のクライム

全2シーズンのNetflixドラマ『マインドハンター』を見終えたので感想を。

ネタバレはありますので、気をつけて。

あらすじ


折角だからとシーズン1、2どちらも載せました。
フィンチャー監督が指揮をとったことで話題になったらしいこのドラマですが、シーズン3の制作予定はないとのこと。
主演はジョナサン・グロフ。かっこよかったので私はすごく好き。

大まかな話の流れとしては、心理的な面から犯罪について考えようとした人たちの奮闘が描かれています。
実際にあった話をモデルにしているので、緊迫感が異様にありました。

感想

見終わった直後の感想は以下の通り。

シーズン3ないんかい!でした。低レベルですが。

まあ、お金やら監督のネタやらで難しいのはわかりますが、続きがありそうな終わり方でしたので、気になるところ。
とはいえ、この監督はいわゆる「完結」を描かず、その後を想像させるような映画を作っていますので(私見)シーズン3があったとして完璧な「完結」は存在しないんだろうなと思っています。(私の大したことないフィンチャー監督履歴を書くのは恥ずかしいですが、『ベンジャミンバトン』『セブン』『ファイトクラブ』『ゴーン・ガール』『ソーシャルネットワーク』どれも私の感覚的に未完結な完結という印象)

シーズン1序盤、なるほど、これはホールデンとビルのバディものだ、と思うわけですが、後半から流れが怪しい。
ホールデン、君少し狂気に満ちた、私たち視聴者を、そしてビルなども置いて1人で進んでいってしまうという展開は、元々無表情じみた主人公の使い方が上手くハマっているようでした。
誰ひとりとして彼の心情を理解することはできず、恐怖さえ抱かされる彼の行動にはビル同様若干引いてしまいます。
しかし、最後の最後、彼にまさかの形で理解者が現れます。
登場は少ないながらも圧倒的な存在感のあるエド・ケンパー。
殺人鬼でありながら協力的で、ホールデンを友人として迎え入れます。
出会った当初から彼と物理的に接触し、威圧的でありながら寛容的で、本当に人を殺したとは思えない落ち着いた話し方をする彼にホールデンは無自覚的に心を開いてしまいます。
なんだか妖しい雰囲気を持ちつつ、ここで私たち視聴者は彼の心の内に触れることができました。
忌まわしいシリアルキラーによって。

と、本当に最後の部分を私の見解込みで書きましたが、面白い点としては、出会い付き合った彼女によって興味を持ち始めた心理学的なものによって彼女と別れてしまったところですかね。
心理を読めるようになったのに、自分のことにはトコトン無頓着。
自分を気持ちを表現できなくなっていますね。(いや、正確には違うかもしれないけど最低限ストレスや所謂「本当の気持ち」については語らずだったかな)
シーズン1の最後とシーズン2序盤を通してホールデンの「重荷」になるものが映されますが、やっぱ人の心理を読める人は感受性が高いのかしらと思いました。
冷静なようで情熱的で、冷淡なようで感情的だからこそホールデンにとって天職のような役割であり、それと同時に無自覚的に彼への負担が大きい(ホールデン任せな部分があることは否めない)ために周りの協力を必要とするわけですが、シーズン2ではビルやウェンディにも焦点が当てられ、特にビルはホールデンどころではない状態ですので、中々に難しい。
ホールデンを労わって欲しいと思いつつ、ビルには休んで欲しいと思う過酷な視聴者の心理状態。
誰か私たちのことも考えてくれ。頼むから。

そういえばシーズン2後半では大分ホールデンの心情描写は削られますが、構成的にはシーズン1と似つつ、しかし私たちは何となくホールデンの気持ちがわかるようになっています。
これはひとつの目標に向かっているホールデンがかなり分かりやすく描かれているために、ビルやウェンディに焦点が当てやすくなっている訳ですね。
ある意味群青劇みたいな。

シーズン2最後の最後。
ホールデンやウェンディは語らずともわかるだろう終わりではありますが、ビルが1番に悲惨。

ビルの息子のブライアンについては、シーズン1からそれとなく伏線が張られていたわけですが、もう想像通りに最悪の事態が起こるわけです。
想像したよりはマシ?それとも想像以上?

ただ、ひとつ。残酷で嫌な予想になってしまうのですが、ブライアンは最後の方意外とビルに懐いていましたね。アイスの力とはいえ。
母親の方が献身的なのに、父親の方に息子が向いているとなると母親としてはどうでしょうか。
ビルの奥さんはそういったある種の嫉妬も混じった感情の元家を出ていってしまったのではないでしょうか。
そう考えで見ると、ブライアンは理想像的な父親像のみ頭の中に残り、「感情的な」母親の元で育てられるわけですが、何だか誰かと似ているような気がする。

そういえば、もうひとつ補足。
この母親って理想的な子どもを追ってる感がありますが、2人暮しやっていけるといいですね。
さらに蛇足。
途中、殺された幼児の親がビルの妻の元へ来て話すシーンがありますが、あの親の神経がよくわかりませんでした。
あれは許すためでも怒るためでもなくただの自己満足な「あの子と私語り」でしたね。
完全に理解できないほどではないにしろ、わざわざ接触を試みる(しかもひとりではなく友人らしき人を味方につけて)姿は個人的にはムカつきました。
ステレオタイプ的な女性像を描かれている感。

ここまで書いて気がついたけどウェンディについてあまりにも触れてなさすぎた。
ウェンディ、とても素敵な女性。
レズビアンである彼女は他の人とはどこか異質で、時々シリアルキラーと重なる。
ウェンディは少しホールデンに似ている。自分の気持ちを口に出して言うことが少ないという点で。
しかし、彼女は自分の考えや気持ちに気づけるタイプです。
ある程度吐くことを知っている彼女はホールデンの良い相談役。
それでいて常識的な彼女はビルの良い相談役。

二重的な側面(ホールデンのような殺人者との近さとビルのような一般的な知見)を持つ彼女だからこそ、2人の間にいるのが丁度いい。
彼女以上の適任者はいないでしょうね。

ここでも補足。
ホールデンの場合はシリアルキラーの心理理解によって彼らと重なり、ウェンディは同性愛という点で彼らと重なることがありますが、基本的にウェンディは客観的で犯罪者への心理理解というより心理認知といった感じがするのは私だけかしら。
学者だから体系化したいようだから相手を「モルモット」として見ている節があり、そこがホールデンとの大きな違い。
シーズン2では大分変わったようでしたが。

さらに補足。
ビルの場合は始めからシリアルキラーたちを理解していないですね。
心理認知すら拒否している模様。
さらに異性愛者であるビルには彼らと重なる部分がひとつもないため、常に彼らのことは冷ややかに見つめています。
それが一転して息子が彼らに「重なって」いるとわかると、さて、ビルはこれまで以上に過剰な反応を、つまり否定を行います。
しかし、アイスを買うシーン、釣りの話をした際には諦念が感じられ、それ以降少しずつ息子と向き合えているように見えました。
ビルは決して彼らに重ならないけど、手を重ねることはできるようになりそう。

シーズン3がないのが悔やまれる。

さいごに

Netflixオリジナルドラマ『マインドハンター』は現在も絶賛配信中。

気になる方はぜひ見てみてください。
グロシーンはほとんどなく、会話メインのクライムドラマですので新鮮な体験ができます。
個人的にエド・ケンパーがいい味してて好き。

ドラマ関係ないけどジョナサン・グロフ、トミー賞おめでとう。
英語学んでいつかブロードウェイ行って、直接ミュージカルを見てやる。
本当にジョナサンがかっこいい。

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