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[コラム] ゼロから始める作詞のヒント:詩的表現編

前回は歌詞を書くための基礎知識的なことを書いた。

で、次は、「書きたいことがどうやったら詩的になるのかな~」を知りたい人もいるかも、と思ったのだ。

なので、この記事では、書きたいざっくりとした内容が、どうやって歌詞になっていくのかを検証してみたいと思う。

実は、これは私も普段は頭では考えずにやってるので、実際に文章にするのは初なのである。

◎「詩的」とは何か

「詩的である」については、答えがなく、正解もない。
だから、何とも定義しがたいのだけど、ただ…

「詩的」とは…読む側の想像力と魂をかき乱す表現…と私は解釈している。

例えば、その文章の中に「感情」に関する情報がなかったとしても、その言葉の連なりから、そこに佇む人間の感情を感じ取ることができる。

それが「詩」なんじゃないかしら。

反対に、直接的に魂を貫いてくる感情丸出しの表現。

そう、それだって「詩」なんじゃないかしら。

◎ありきたりな文章を詩的にするには…

どんな出来事でも、情景でも、感情でも、そこにあなたの心が存在すれば、それは「詩」になる。

例えば

満月が登って湖面に映っている。
私は一人で夜道を散歩して、あなたのことを考えている。

と言いたいとする。

情景としてはめっちゃ詩的なんだけど、言葉の連なりとしては、このままではあまり詩的って感じではない。

これを詩的にすると、こうなる。

湖面に映る月の影、満ちてゆく。
あなたのいない夜道を歩く。

ここで、感情に関する言葉「あなたのことを考えている」の要素を排除してみた。
それでも「君を想う」が伝わっただろうか。

何と言ったらよいか…余白…、余白を作るのだ。

そして~、さらにさらに、これを歌詞っぽくすると、

満ちてゆく 水面に落ちた 月の船
伸びる夜道に あなたはいない

って、短歌になってしまったw

歌詞となると、文字数の縛りが出てくるので、さらに言葉をいじる必要が出てくる。

このように、文字をこねくりまわして詩ができる場合もあるし、なんも考えずにポンとできる場合もある。

情景描写からそこに佇む人間の感情がドバァとやって来る歌として、私はこれを挙げておきたい。

キッチンにはハイライトとウイスキーグラス
どこにでもあるような 家族の風景

7時には帰っておいでとフライパンマザー
どこにでもあるような 家族の風景

友達のようでいて 他人のように遠い
愛しい距離がここにはいつもあるよ

キッチンにはハイライトとウイスキーグラス
どこにでもあるような 家族の風景

何を見つめてきて 何と別れたんだろう
語ることもなく そっと笑うんだよ

◎比喩

「詩」には比喩がつきものである。

何それ? と言う人はここを読んでくれ。

直接表現しないで、何かに例えて伝えると、詩的な感じになったりする。

困難な状況を山登りに例えたり、人生を川の流れに例えたり、初恋を蜜の味に例えたり。
いろいろやってみると面白い。

日陰の霜柱は昼ちかくまで融けずに残っている。
そのため多くの人間に踏まれて半分は潰されてしまう。
残りの霜柱も午後には融けて惨めな姿になってしまう。
それでも霜柱は夜明け前に再び立ち上がる。
何度も何度も立ち上がる。
それを僕は見ている。
何度も何度も立ち上がる日陰の霜柱を。

これは学生のころ書いた詩だな。
全体が比喩になっている。

あと、比喩を使うと、エグい・エロいことでも美しく表現できちゃうという利点もある。

ほどけてく淡い月夜に姿をさらして
まどろむ花びらの雫さえ脱ぎ捨てよう

あふれてく夜の匂いに体を沈ませ
ざわめく言葉を聞いて

花は密やかに揺れてる
やがて消える想いも
花は密やかにまっている
儚い命のまま

これも全文が比喩になっている昔書いた歌詞。

これ実は〇〇のこと歌ってる…と気が付いたときに、その言葉に奥深さを感じてもらえたりする。

こうやって書くと、比喩を使うときには、読む人(聞く人)に解ってもらえるように作る必要がありそうに思うけど、そんなことはまるでない。

せっかく比喩を使うのであれば、むしろ、解りやすく書いてはいかん気もする。

自分だけの真実はあってもいいかもしれないけど、解釈は受け取り側に完全にゆだねるのが面白いかもしれない。

そうやって、いろいろなふうに読み取れる世界を作り出せるのも “比喩” の面白いところだ。

言葉によって、世界の意味を決めつけすぎない、そして、受け取る人によってどんな意味にもなる…そんなことができるのだ比喩は。

英語だけど、こちらは比喩の塊のような歌。

↓歌詞の意味はこちらのサイトが解りやすかったのでご紹介。

https://lyriclist.mrshll129.com/u2-still-havent-found-what/

これは人類史に残る名曲です。

◎擬人法

私はわりと擬人法を多用する。

何それ? と言う人はここを読んでくれ。

擬人法は、人ではないものに使うのだけど、自然現象や自然のもの、感情といったものを擬人化すると、わりと詩のようになると思う。

山は背を伸ばし
時の舌の上で
視線は駆け足で
悲しみの腕に絡み取られ

とかとか。

風のささやき、とか、春の足音、とかはまあまあ使われる表現なんだけど、ちょっとおかしな組み合わせを使ったりすると面白い詩が書けそう。

レッツ擬人化!

◎心にズッキュンと直接ぶち込め言葉を

ここまでは、間接的な表現について述べてきた。

今度は反対に、直接表現、感情丸出しタイプの詩について考えてみよと思う。

まあ、これは深く考えずにやるのが得策なんだけど、でもただ感情を叫ぶだけでは稚拙な感じになってしまう。

ストーリーが必要だわね。

例えば、銀河の端と端くらい果てしなく遠く離れてしまった想い人に向けて歌うとか。

いますぐ会いたい。
何億光年かなたに離れていても。
君の元へ飛んでいくよ。

的な。

このようなタイプの詩・歌詞を書くとしたら、壮大な方がいいと思うのね。
宇宙規模で叫んでいる感じ。

恋する気持ち、怒り、喜び、体に収まりきらない感情を吐き出すように言葉を叩きつけたらよい。

これとかいいよね~。

◎君はこの歌が聞こえるかい? 問いかけ系

心に直接呼びかけるタイプの詩・歌詞もある。

これはかなりグッときちゃうやつである。

泣いちゃうやつって、実は呼びかけ系のものが多いのではないかな。

誰か特定の人に、もしくはみんなに問いかけたいことを直接的な言葉にしてぶち込む。

力強い詩・歌詞になるのではないかな。

例えばこんな。

あぁ こんなロックは知らない要らない聴かない君が
上手に世間を渡っていくけど
聴こえているかい この世の全ては大人になったら解るのかい?

あとこれね。

◎人を惑わす言葉の深い深い森へ…
ナンセンスの世界

最後にもう一つ。
詩の世界には「ナンセンス」というジャンル?がある。

これはその名の通り、無意味で滑稽な感じのものである。

「詩」にするのは結構難しいんだけど、安部公房の「壁」という短編集に出てくる詩を紹介したい。

これがおまえの部屋でないというのなら
私は色鉛筆を食べて死んでもいい
一ダース百二十円の色鉛筆
半分食べれば確実という証明書つきのやつを
いっぺんに全部食べて死んでもいい

うん…これをとにかく深読みしてどうにか理解しようとするのはそれこそナンセンスだと思うのよね。

このような詩を作るには、類まれなる「言葉」のセンスが必要で、なかなか凡人には難しいぞ!
でも書くのはとっても楽しいのでぜひ挑戦してみたいジャンルである。

そして、この「ナンセンス」を取り入れた歌詞の最高峰と言えば、この歌じゃないかな。

白のパンダを どれでも全部並べて
ピュアなハートが夜空で弾け飛びそうに輝いている
火花のように

マジで意味わからん。

でも気が付いたら口ずさんでいる…
とんでもない天才が作った歌詞なのです。

◎最後に企画のご紹介

この記事は、詩を書いてみたいと思っている全ての人を応援するために書きました。

このように偉そうにいろいろ書いているけど、自分のことは完全に棚に上げているのでご了承願いたい。

そしてこの記事は、この企画に参加しようと思っている人を応援するためでもあります。(2021/11/30〆切)

物語に対して歌詞を書くというもの。
曲は応募された中から選ばれたものにつけられるので、詞先になります。

始めて歌詞を書いてみる~という人もぜひ参加してみてほしい。
私はあなたの書いた歌詞が見たい!

以上です。

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