[推し短歌] アニメで短歌
推しへの想いを詠んだ短歌の企画ということで…
普段、アニメで短歌を詠んでいます。
その中から、イチオシのアニメについて詠んだ短歌で行きたいと思います。
◎『地獄楽』に寄せて
霧深くがらんの心で彷徨えど
生きて帰れと君の道しるべ
江戸末期。クレイジーな死罪人たちと打ち首執行人がペアになって奇怪な島で命をかけた宝探しの物語です。
主人公の 画眉丸(がびまる)は、見た目は少年のようですが、冷酷で残忍…血も涙もないという意味で “がらんの画眉丸” と呼ばれる最強の忍にして死罪人です。
殺すなら早く殺せとのたまう画眉丸を観察していた打ち首執行人の佐切は、彼の中に生への執着を見ます。
そして、彼がたった一人愛する妻の元へ帰りたがっていることを見抜くのです。
お上から『極楽浄土と噂される島から不老不死の仙薬を持ち帰れば無罪放免』というお達しが出ていて、打ち首執行人たちは連れて行く罪人を探していたのでした。
こうして、画眉丸と佐切を含む、死罪人たちと打ち首執行人たちは島に渡ります。
この島が想像を絶する狂った場所で…。宝探しどころか生きて帰ることすら不可能なのでは…と思えるような試練の旅が始まるのです。
この歌は、画眉丸を詠ったものです。
◎『地球外少年少女』に寄せて
飛び違う人には知れぬ文脈の
ゆきつく先に見えし人類は
物語の舞台は2045年。地球周回軌道上に建設された日本製の商業施設「あんしん」。
そこには、登矢と心葉という14歳になる少年少女が暮らしています。
二人は人類で初めて月で生まれた子供で、とある事故によって両親を亡くしている孤児です。
そこへ、地球から未成年者宇宙体験キャンペーンで地球から3人のティーンズがやって来たタイミングで事故が起きてしまいます。
「あんしん」は宇宙ステーションであり、宇宙ホテルなんだけど、AIが制御しています。
事故はなぜ起きてしまったのか…子供たちは脱出できるのか…。
ここに、人間の把握できる領域を遥かに超えてしまったAIが関わってきます。
この物語におけるAIの存在感が私の心を掴んで離さない物語なのです。
短歌はAIによってもたらされる、そう遠くない未来のことを想い詠いました。
◎『86―エイティシックス―』に寄せて
幾千の花ぞ散りける戦場の
君の名刻むハチロクの死神
舞台は現実世界より科学技術がだいぶ進んでいると思われる架空の世界。
主人公の青年 シンエイ・ノウゼンが生きているのは、ある人種のみが人間とされる狂気的な超差別思想により成り立つ架空の共和国。
人間として認められていないシンたちは、共和国の存在しない地区 86区(強制収容所)に暮らし、86(エイティシックス)と呼ばれています。
共和国は長年にわたって隣国と戦争をしていますが、戦場に出ているのが人として認められていない 86の者たちなのです。
シンはその中でも死神の異名を持つ狂気をはらんだ戦士です。
彼は戦いの中にしか生きる術を知らず、仲間の死を背負って進んで行きます。
この歌は、とにかく生きてほしいという願いを込めて詠いました。
◎『Vivy -Fluorite Eye's Song-』に寄せて
人類の歩みの止まるその日まで
歌で命を私は繋ぐ
物語が始まるのは2061年4月11日。
世界初自律人型AI(アンドロイドのようなもの)であるディーヴァ(愛称 ヴィヴィ)は、「歌でみんなを幸せにする」という “使命” を与えられて、AI複合テーマパークで歌っています。
そこへ、謎のAIデータ「マツモト」が接触してきます。
マツモトは、ちょうど百年後の今日、AIたちによる人類の抹殺が開始される運命にあるとヴィヴィに告げます。
自分はそれを阻止するために未来から来たのだと。
ヴィヴィは百年後の世界でも残っている機体であり、この計画の協力者に選ばれたのだ。
こうして人類を救うためヴィヴィとマツモトふたりのAIの百年に渡る旅が始まります。
私は普段、歌をうたっています。
この物語の主人公がAIながら人の心に届く歌をうたいたいと考え人類を救おうとしてしている姿に胸打たれてしまいました。
短歌ではヴィヴィの想いを詠ってみました。
◎『どろろ』に寄せて
暗闇に揺らぐ気配を今日も追い
人になるためまだ見ぬ体と
2019年に手塚治虫の名作『どろろ』が新しい解釈のもとアニメ化しました。
『どろろ』は子供のころから私のイチオシの物語であり、未完の作品でもあります。
物語の舞台は戦国時代。
盗みを働きながらたくましく生きていた孤児 どろろは、ある時、全身が作り物の体でできている謎の青年 百鬼丸と出会います。
百鬼丸は体を妖怪に奪われており、手足に仕込んだ刀を使って妖怪たちを倒し自分の身体を取り戻す旅をしているのです。
どろろは百鬼丸についてまわり、彼の戦いを目の当たりにすることになります。
2019年版では、百鬼丸の設定が大きく違っていました。
妖怪に視覚や聴覚など感覚の全ても奪われている百鬼丸は、それを取り戻すまでは、音のない暗闇の中にいます。
人や妖怪の気配のみを追って彼は生きています。
言葉もないので、最初は精神も赤子のまま、まさに動く人形のようなものとして登場します。
妖怪との戦闘においては超人的な身体能力を発揮し、無敵感ある百鬼丸だけど、通常の日常生活となるとひとりでは人間らしい生活をほぼ送れない不憫な面が残酷なまでに描かれていました。
そんな百鬼丸が、徐々に自分の感覚や肉体を取り戻すことで、人間になっていく過程が、もう胸に迫るものがありました。
この短歌は百鬼丸の想いを詠いました。
◎『ツルネ』に寄せて
吹き溜まる想いも全て貫いて
飛べよこの矢弦音と共に
高校弓道部の物語です。
いろいろこじらせている高校男児たちの弓道を通した青春の物語。
何しろ音がすばらしいアニメーションでした。
弓を引くギリギリという音から、矢を放った時に聞こえるツルのカーンッという音。
矢がヒューンと飛んでいき、スパーンッと的に当たる。
そこに登場人物たちの想いが乗っていきます。
人間ドラマも複雑で深くて、群像劇としてもたいへん素晴らしいです。
弓を引く姿に、本当に拘りをもって丁寧に作られてるんだってビシビシ伝わって来る作品なのでした。
短歌は登場人物たちの想いに寄せて詠みました。
以上です。
よろしくお願いします。
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