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ショートショート

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2024年8月の記事一覧

[ショートショート] 流星群ラララ シロクマ文芸部

[ショートショート] 流星群ラララ シロクマ文芸部

 流れ星を見ると心の奥がチクりとする。

 あれは僕が十八の時だ。

 階段から滑り落ちるように僕は未来都市へと迷い込んでしまった。

 そこでレンカと出会った。

 レンカはショートヘアがよく似合う格好良い女だった。

 レンカは迷子の僕に居場所をくれた。

 レンカは今で言うジャーナリストのような仕事をしていた。特殊な機械を持っていて何でも調べてくれた。
 それで彼女は自分の仕事で忙しいのに、

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[ショートショート] 永久迷宮:ひと夏の人間離れ

[ショートショート] 永久迷宮:ひと夏の人間離れ

夏休み…。
と言っても夏期講習の毎日だ。

その日、教室には女の子が一人だけ来ていた。
見たことがない子だった。電気も点けずに薄暗い教室に立っている。

その子のワンピースの袖から伸びている腕がやけに青白くて、そして異常に長いことに気がついてしまった。

片方の腕だけが床につきそうなくらい長い。

気がつかないふりをして教室に入るべきか迷っていると、女の子が急にこちらに向かって突進してきた。

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[ショートショート] 小夜 - 桃太郎伝説

[ショートショート] 小夜 - 桃太郎伝説

 小夜が鬼になってしまった。

 宮使いをして五年目の秋。故郷の村から初めて届いた伝達がそれだった。

 宮様に話すとあっさり「いいよー」と言って一時帰郷をゆるされた。
 あまりにあっさりだったので拍子抜けするほどだった。

「その小夜という娘、お前にとって大事な子なんだろう?」

「亡くなった親友の妹です。俺が面倒を見てました」

「そうか、ならば尚更お前が行ってやらねばな」

 俺は宮様に感謝

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[ショートショート] 夏の残り火:0.001%

[ショートショート] 夏の残り火:0.001%

 操縦席の前方に座っているスバルの首筋に汗が光っているのをさっきからずっと見ている。
 彼は生存を諦めていない。

 だが俺たちはここで死ぬのだ。

 開拓用装甲車のキャタピラがガヌルの死骸をいくつも踏みつぶして嫌な音を立てている。

 殺しても殺しても奴らは不気味な歯をガチガチいわせて襲ってくる。

 異常事態である。

 …スバルよ…、俺はもう覚悟はできているぞ。
 この灼熱ガヌル地獄が俺たち

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[ショートショート] 綾子と虎丸:1秒の恋

[ショートショート] 綾子と虎丸:1秒の恋

「姫さま〜!姫さま〜」

 家臣たちが右往左往しているのを綾子は木の上から眺めていた。

 …誰も私がこんなところにいるとは思うまい。

 あんな重たい着物を着て婿面談だなんて綾子は真っ平ごめんだった。
 まだまだ自由でいたい。婿くらい自分の間合いで決めたいのだ。

 木の上からバタバタ走る者どもを見ていると、どうやら隠密集も動員されたようだ。無能な若衆たちに見た顔が混ざっていた。

(虎丸か…)

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