かなしみ(詩)
先生、かなしみとは一体なにか
先生、かなしみとは一体なにか
冷蔵庫からひっぱりだした好物の
賞味期限が切れていたときにわく
あのちっぽけな絶望か
それとも
賞味期限切れの好物を
欲に光る目でとらえ乱暴に口にはこぶときよぎる
あのざらついた嫌悪感か
いいや、それとも、
ほおばった好物のすえた臭いと鋭い酸味に
舌が痺れて泣きたいときの
あの不細工な虚しさか
それとも、それとも、
卑しさと馬鹿げた勇気で好物を呑み下し
腹を壊して寝込んだときの
あのいやにしずかな不安か
はたまた
腹痛が治まったあと
どういうわけか好物が好物でなくなり
見ただけで気持ち悪くなったときの
あの不思議な腹立たしさか
先生、かなしみとは一体なにか
先生、かなしみとは一体なにか
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