乳歯、乳歯、永久歯
わたしの乳歯は のんびり屋
ちいさいけれど 根は太く
絶妙な硬さと形状で 肉も骨もしっかり砕く
けれどもね やっぱりちいさいものだから
顎が大きくなるにつれ
スカスカ隙間があいちゃって
噛むにも 飲むにも 喋るにも
ちょっと不便になってきた
わたしの乳歯が 一本抜けた
さいなら言って ぽろっと抜けた
あんなに鋭かったのに 落ちたらちんけな粒だった
そのあとも あちこち続けて抜けていき
歯肉が風になでられて
スースー寒い気持ちになって
噛むのも 飲むのも 喋るのも
前よりもっと不便になった
わたしの心は 歯抜けになった
にいっと笑うと ほとんど歯なし
だけど歯肉の奥の方 きっと立派な歯が隠れている
象牙色の それはそれはたくましい歯が
そのうち にょきにょき生えてくるはず
きっときっと生えてくるはず
だから 笑わないでください
歯抜けと言って 笑わないでください
怖がらせないでください
生えてこないかもなんて