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独白「胸の奥にしまっていた孤独」。愛する人に愛されたかった想いを感じて生きる。人は、深く傷ついた時の苦痛をかばいながら生きている。PART1

和江(仮名)は、昼間は働きながら夜間高校に通った。親元を離れ、福岡から奈良に15歳でやってきた。今から、45年も前の話だ。
その学校は、○○教という宗教団体が経営する学校で全国から信者の子弟が入学してくる。まともに普通科に進学できないのは、本人の最低の学力と親の最低の経済力が原因だからである。
○○教でも全日制の普通科があって、選抜高校野球の常連だったり、偏差値も高い進学校で全国から選び抜かれたエリート校という知名度のある学校とは全く違う別の姉妹校である。
和江が通った定時制高校は、貧乏人の口減らしみたいなもんでやさぐれていた。やさぐれるとは、すねる、なげ槍になると云った意味である。

「1年奴隷、2年平民、3年天皇、4年神様」

まるで収容所のような全寮制の寮生活で、和江は、1年生から4年生に上がるまでのいばらの道を歩んだ。
4年生というのは、「神様」並みの権力を持っている。が、もともとが学校給食のコッペパンを家に持って帰って兄弟たちに食べさせたり、食べるものがなくて水を飲んで学校に行ってたような家から出てきた先輩たちなので、底意地が悪い。自分たちが受けてきた家庭の貧しさや不条理が染みついていて弱者(下級生)を虐めることで、過去に受けて傷に対しての憂さを晴らしている。なにかと言いがかりをつけ、下級生を呼び出し集団で攻め立てる。そんな慣習がまかり通っている。そんな先輩たちに軍隊の下級兵のような扱いを受けながら学校生活を送る。そしてゾンビがゾンビを生む。今度はいじめられてきた下級生は、上級生になりいじめる側へと変貌する。

先生が教室で読んでくれた新聞記事で号泣する和江

ある日の授業中に、先生は新聞記事をみんなの前で読んでくれた。その記事の内容は、幼子(多分かなり幼かったように思う。2歳位)が隣人のおじちゃんにものすごく可愛がられている。子どももものすごく懐いていて、家族ぐるみの良好な関係を築いていた。ところがある日、突然、隣人男性は豹変する。可愛がっていたその子どもを人質にして、立てこもり彼女の小指を切り落としてしまったのだ。和江は号泣した。無条件におじちゃんの愛を信じて100%心を許していた2歳の子供の心が壊された。和江には、それが分かった。
教室でただ一人、大声で号泣する和江に、先生も生徒も驚き戸惑った。その記事の出来事が、和江の幼き日の心の傷にふれたことについて、PART2で書いていきたいと思う。



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