見出し画像

独白「姉弟物語」。愛する人に愛されたかった想いを感じて生きる。人は、深く傷ついた時の苦痛をかばいながら生きている。PART2

PART1では、和江が幼児を人質に立てこもった新聞記事によって、自分自身の幼少期の経験がフラッシュバックしてしまい、取り乱してクラスの同級生の前で号泣したことを書いた。今回は、和江が幼少期に経験した「弟」が受けた災難によって彼女の心境にどんな変化が起きたのかについて書いてみようと思います。和江は、人間的に成長できなかった「弟」について関係を断ち切る決断がなかなかついていなかった。決心がつかぬまま、弟とは連絡がつかなくなった。生死も安否も分からなくなって2年が過ぎた。
そんな弟との様々な思いを巡らす。弟が2歳の時に火傷をしたことを想起する。和江は、当時3歳で記憶もあいまいで、母から聞いた話を思い出しながらたどっていくと・・・
台所で母がラーメンを作っていた鍋に弟が手を突っ込んで大火傷をしたという話でした。和江はその聞いた話を基に想起を試みようとしましたが、矛盾を感じている。弟は、手首の裏がわに15センチくらいにかけて、ひじの方に向かって大きなほくろのように黒く残ってしまった火傷のあとがある 。母の話だと、弟が鍋に手を突っ込んだことになっている。それだと手を火傷する。なんでこんなに記憶違いがあるのか?と思いながら、静思していると突然その場面が目の前に現れた。五徳コンロにラーメンの鍋をかけて立っている母の隣に弟がいる。母が、麵をほぐそうとした時に袖が鍋の柄にひっかかり、袖を外そうとして鍋がコンロから下に落ちた。その時に、弟の右側の手の裏側に鍋が落ちた。弟は、ぎゃ~と叫び火がついたように泣き叫び始めた。台所の後ろで見ていた和江も母も大パニックになって、3人で地獄の炎の中にいるような状態で叫んでいる。そして母は隣のおばさんを呼びに行った。隣のおばさんは、弟を抱え上げ水道水を流しながら、服を着せたまま冷やし続けた。その時に、皮膚が服にくっついてはがれてケロイドにならないようにこのまま冷やそうと言っている。弟が泣き止み、私も母も冷静さを取り戻し始め、私は、興奮して涙でぐちゃぐちゃになっている自分に気がついた。おばさんは、弟の服の袖を切ってくれた。そうして、母は病院に弟を連れて行き、私はおばさんと留守番した。帰ってきた弟を見て、「優しくしてあげよう、痛い思いをしたのだから、お姉ちゃんが弟を助けなきゃいけない。」そう決心した。その時の気持ちが、大人になってからも続いていたことに気がついた。成長するにつれ、道を踏み外していく弟に情けをかけ、迷惑をかけられても縁を切れずにいた理由が、幼き日の決心にあったとは!
そして、なぜ母が自分のミスを弟のせいにして嘘をついたのか?振り返ると母はいつも都合の悪い問題は、子供たちのせいにしていた。両親は仲が悪く、正直に本当のことを言ったら責められると思って、可愛い長男で一人息子のせいにしたら怒られないのだと考えていた。いつも弟を父に代わって支配しようとしていたことを思い出した。

無意識に隠された怒り💢

和江は、幼少期を振り返りながら「なぜ、母と弟が大人になってから争い続けて来たのか?」合点がいった。大人は子どもが何も知らないと思っている。だけど、子どもはしっかりと知っているのだ。自分のせいでもないのに自分のせいにされたということを💢弟は、「親は子どもを守ってくれる。」そう信じていた。弟だけじゃない。世界中の子ども達は親を信じて生まれてくる。例外はない。だから、弟には葛藤があった。生まれた時から後継者になることを強制された。弟は、ラグビー選手として将来を嘱望された。本人も高校生の時から注目され前途洋々で、この時期の彼は光輝いていた。だが、外に出して帰ってこなければ家系は途絶えるという理由で連れ戻された。両親は、争いが絶えず二人共が弟に依存した。
子どもを愛していれば、子どもが羽ばたく事を応援するだろう。だが、それはしなかった。そうして家は壊れた。争ってばかりだった家はもうない。父は、アル中で精神病院で死んだ。母は失踪した。弟とは音信不通だ。

子どもを愛し助けなければやがて家庭は破壊する!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?