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古内一絵/「風の向こうへ駆け抜けろ」【かなりネタバレ】

主演てち(平手友梨奈)でドラマ化され、12月のNHK地上波土曜ドラマで、前・後編で放送されるとのこと。

「ウマ娘」ゲーマーでもある私は、さっそく興味を持った。

●主演・平手友梨奈さん 土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」制作開始(NHKドラマ)

まずは原作を読むことにした。今回のエントリーは、主として原作についてのレビューである。

ドラマとは若干設定が異なっている。

芦原瑞穂は、騎手養成学校を卒業したばかり。

彼女は北海道出身で、父は生産牧場主だった。

母は幼少期に他界し、記憶にも残っていない。

いろいろ思い出が残る父も、くも膜下出血で急死してしまった。

東京の叔父の家で育てられる。

瑞穂が騎手を目指したいと言い出した時に、叔父は猛反対したが、結局は折れた。

瑞穂は成績優秀だったが、瀬戸内海沿岸の鈴田市にある、緑川厩舎から声がかかる。

地方競馬には、騎手300人のうち10人ほどしか女性騎手はいないが、瑞穂はこの誘いに乗る。

厩舎の経営者、兼、調教師である光司とは、厩舎に来てから出会う。

まるで風采があがらない、だらしない、無気力な男。

実際には、市役所の広報課の職員、大泉が斡旋したというのが真相のようだ。

厩舎はひどい荒れようで、誠という、失声症の美男子の少年が、非常に熱心に馬の世話をしているのを除くと、他の厩務員は、中年男(山田のゲンさん)や、トワちゃんと呼ばれる80歳以上と思われる老人だけ。

馬もろくなのはいない。18歳を超えた馬もいる。

全部で3頭で皆未勝利。

瑞穂は歓迎会で溝木という男性に引き合わされるが、愛人をたくさん抱えている馴れ馴れしい男。

実は、瑞穂が招聘されたのは、大赤字で閉鎖寸前の鈴田競馬場の人気を盛り返すための「客寄せパンダ」としてであることが明らかになってくる。

瑞穂は、戦隊モノのような恥ずかしいピンクの勝負服を身につけることを求められる。

乗ることになった馬の調教も全然思わしくない。

それでも初レースに臨むが、惨敗。

だが、ふとした偶然から、瑞穂は、光司の秘められた過去の栄光を知ることとなる。

ここから、徐々に、厩務員たちはやる気を出し、瑞穂も数試合かけてやっと、まさかの一勝を掴む。

だが、瑞穂が溝木の誘惑を拒んだのをきっかけに、まだしも力のあった一頭が引き上げられてしまう。

ここで光司は完全に前のめり。新しい馬を求めて、瑞穂と誠を連れて上京。

馬探しには難渋するが、併せ馬(闘犬でいう「噛ませ犬」)のみに使われ、満身創痍の痩せ馬だった、異様な形相の2歳馬が目にとまる。

この馬の調教は並大抵のものではなかったが・・・・

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原作者の古市一絵という人は、1966年生まれですからベテラン。

競馬については「蒼のファンファーレ」という小説もあり、初めてではないようですが、凄い下調べ、取材を重ねて書いていると思います。

レースシーンの描写なんて、完全に乗っている騎手の体験しているであろうライブ感がすばらしいです。

個性あふれる登場人物、個性あふれるウマたち(!)、起承転結が非常にしっかりした、熟練した物語展開ですね。

非常にドラマ化に適した作品というか、実写映像が浮かんでくるかのようでした。

脇を固める役者さんは皆演じがいがありそう。

地方競馬の闇にも随分踏み込んでいるようにも思える原作です。ハルウララは幸せな馬ですね。

こりゃ、単発ドラマでは無理やなと感じたのですが、番組紹介を読む限り、原作全体をドラマ化するようです。

前後編、合計2時間半はちょうどいい尺だと思います。

てち、乗馬の訓練は大変だと思います。

大河ドラマの乗馬とはわけが違う。何度かあるレースシーン抜きにこのドラマは成立しない。

コロナ下で、群衆シーンの撮影も難しいであろう中、どう撮影するのかも興味があります。

いずれにしても、「ウマ娘」のように、慣れれば皐月賞や日本ダービーを軽々クリアしていけるのとは別世界の物語です。

楽しみに待ちましょう。


#読書の秋2021


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