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「どげんかせんといかん」の宮崎弁をネイティブは使い分けている

「都城の方言らしいな『どげんかせんといかん』て。『どんげか』が正解やろ?」
「いいや?どっちも使うで」
「宮崎出身のヤツがそうゆぅとったんやから」
「宮崎人の言うこと信用したらアカンて。宮崎人は方言の使い分けをいちいち説明すんのが面倒くさいからテキトーに『ドコドコで使われる方言です』つって終わらすねん、関西人以上にテキトーやからな宮崎人」
宮崎人のこのいいかげんな性格のことを宮崎弁で「テゲテゲ気質」と言う。

宮崎人がちっとも説明しない「どげんかせんといかん」の使い分けについて、宮崎で生まれ18歳まで宮崎で育ち宮崎県内を転々と引っ越した甲斐あって、宮崎人でも理解困難な諸県弁を8割がたヒアリング出来る私が説明しよう。

夫が都城の方言だと聞いてきた「どげんかせんといかん」とは、東国原知事が発した宮崎弁「どげんかせんといかん」のことである。

宮崎弁はいちいち説明するのが七面倒くさいほど、方言の使い分けが細かく存在する。
「げな?↑(語尾上げ)」と「げな↓(語尾下げ)」のように、語尾を上げるのか下げるのかのイントネーションだけで意味が変わり、それを使い分けている。
「どげんかせんといかん」と「どんげかせんとかん」は「どげんか」と「どんげか」の、たった一文字を入れ替えただけの違いしかないが、宮崎人は誰も説明なんか受けずに使い分けている。

標準語の意味としてはどちらも「どうにかしないといけない」であるが「どげんか」と「どんげか」の違いは「どうにかするのは誰なのか」ということにまで言及しているのである。

「どげんか」は自分もしくは自分を含む複数人でどうにかする時に使う。
「どんげか」は自分を含まない他人が一人もしくは複数人でどうにかする時に使う。

自分が動く時は「どげんかする」
自分以外の人に頼む時は「どんげかして」
どげんかする、自分が。
どんげかする、他人が。
どうにかする人間が自分なのか他人なのかの違いがあって、使い分けているのである。

「どげんかする」だと自分が動く。
「どんげかして」だと他人に丸投げ。
「どんげかはしよか」だと自分が指揮をとるが実際に動くのは別の人。
「どげんかしてくる」だと自分が動き自分以外の人も自分が動かす。
語尾に付け足す言葉によっても使い分けている。
それをいちいち説明せずともネイティブ同士なら、本人がやるのかそうじゃないのかはわかるのだ。

宮崎は、自分が「どげんか」しなきゃいけないような事なんて滅多に起こらないのどかな県なので「どげんかせんと!」と言うような人はそうそう現れない。
宮崎人の県民性にしたって自分から動くタイプは少ないので「どんげか」ばかりを使っている。

トイレの貼り紙は、トイレ利用者にキレイに使用してほしいので「どんげか」

「どんげか」は自分以外への投げかけ

テゲテゲ気質の宮崎人は自分じゃない誰かに「どんげか」してほしい。

そんなテゲテゲな宮崎で「どげんかせんといかん」と言った東国原英夫氏は「自分がどうにかしないといけない」と宮崎人にしては珍しく自分が率先して動く意思を見せる頼もしい発言をしたから知事に選ばれた宮崎人にのみわかる使い分けをする、策士だったわけである。

#創作大賞2023 #エッセイ部門

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千徒馬丁
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