📖この本で学んだ１５このこと　『こうやって考える』外山滋比古

①化合物を求める

発想が扱うものは、周知、陳腐なものであってさしつかえない。そういうありふれた素材と素材とが思いもかけない結合、化合をおこして、新しい思考を生み出す。発想の妙はそこにありというわけである。

発想のおもしろさは、化合物のおもしろさである。元素をつくり出すことではない。

②無意識を使いこなす

どうも考えは一度水にくぐってくる必要があるように思われる。
寝て目をさましたときの考えがそうであるし、しばらく忘れるともなく忘れていると、おそらく無意識のうちに熟していたであろう考えが突然躍り出る。
意識という水面上では見えない成熟が無意識界という水面下において進んでいて、好機に恵まれると、外へとび出してくる。
アイディアよ出てこい、アイディアよ出てこい、とばかり、たえず追い廻していると、ろくでもない考えばかりひっかかる。

→無意識の水をくぐるには、時間がかかる。だから、早め早めに情報を「とりあえず」入れておくことが大切なのか。

③考える基礎は生活

長い間、考える基礎は知識であると信じていましたが、知識から思考の生まれることはまれで、生まれる思考は小粒で非力です。

思考は、生きている人間の頭から生まれるのが筋です。研究室で本を読んでいる人は思考に適しません。生活が貧弱だからです。

④書く衝動を逃さない

「本を読みたい」と言う気持ちは、時々起こるが、「ものを書きたい」と言う衝動は滅多にあるものではない。書くのは相当不自然なことらしい。「書いてみたい」と気が起こったら逃さないようにしなければいけない。インスピレーションではないが、二度とやってこない。それもある。

⑤ 1回性の思考を逃さない

ものを考えたり感じたりしたとき、とりあえず記録するノートは、その人間の精神生活の履歴書のようなものである。この上ない貴重なものになる一人ひとりの人間が偶然のように考えたことと言うのは、一回性のもので、一度消えたら行くよりも還ってこない。

⑥スタイルを破壊する

スタイルがなくてはものは書けない。さらに考えることもできない。しかし一旦できてしまったスタイルはなるべく早く壊さなくては危険である。スタイルによる自家中毒は、精神にとって最も恐ろしい老化の原因になるからである。

⑦外付けHDDとして日記をつける

忘れようと思ってもなかなか忘れられないことでも、書いてみると、案外。あっさり忘れることができます。書いて記録にしてあると思うと、心して忘れることができるのです。

日記をつけるのも、記録しておきたいという気持ちが主ですが、実際は、日記をつけることで、安心して忘れられるということが少なくありません。

⑧この特性を理解する

頭の仕事をする者にとって、朝は金の時間である。ただし食事をするとたちまち鉄の時間になる。昼食前は銀の時間。食後は鉛の時間になる。夕方の腹のすいているときはまた銀の時間がやってくる。夕食後は時間を通りこして、十時以後ともなれば石の時間である。夜型などど称してそんな時間になってから頭を使っていれば、石頭になっても不思議ではなかろう。

⑨本の価値を捨てる

借りた本では論外だが、自分の本なら、読むときに、鉛筆でしるしをつけて読み進むのもよい。あるいは、赤、青、黄などのサインペンを用意して、自分の考えと同じものは青、反対趣旨のところには赤線、新しい知識を提供しているところは黄の線をひいておくというようにすると、一見して、どういう性格の部分であるかがわかって便利である。もっとも、これは自分の本で、しかも、本としての価値を犠牲にしてよいと決心できたときにかぎって実行できる方法である。

⑩いやな本は放り出す

ひとの意見によることもなく、自分の判断で本を選び、自分のカネで買う。買った以上、読む義務のようなものが生じやすいが、読んでみて、これはいけない、と思ったら、読みかけでもさっさと放り出す。いかにも乱暴のようだが、いやな本を読んでも得るところは少ない。

本に義理立てして読破、読了をしていれば、もの知りにはなるだろうが、知的個性はだんだん小さくなる。

⑪乱読する

創造力のある、発見のできる頭をつくるには、でたらめの読書が立つ。手当たり次第、読んでみる。わからなければ飛ばすが、「おぉ」といいところがあったら、じっくり、つき合う。そういう気ままな読み方の乱読とすれば、思いがけない発見が可能になる。

⑫躍動的思考を呼び込む

気心が知れていて、しかも、なるべく縁のうすいことをしている人が集まって、現実離れした話をすると、生々として、躍動的な思考ができて、たのしい。

たくまずして、話ははじめから脱線している。脱線は脱線を誘発してはじめはまったく予期しなかったところへ展開して行く。

調子に乗ってしゃべっていると、自分でもびっくりするようなことが口をついて出てくる。やはり声は考える力をもっている。われわれは頭だけで考えるのではなく、しゃべって、しゃべりながら、声にも考えさせるようにしなくてはならない。

⑫立体的コミュニケーションを意識する

ひとりではいけない。二人でも足りない。それが三人になると、知恵が出る。

ひとりの考えは、いわば点である。二人の話し合いは、線と面をつくることができるが、平面的であるのは是非もない。三人寄れば、立体的コミュニケーションが可能になって、点的思考や平面的思考では及びもつかない複雑、混然の造かさをとらえることが可能になる。

⑬笑いの起こる場をつくる

うまく乱談の場をつくることができれば、われわれは半分、ひとのの触発によって、いくらでも発見に近いことを起こすことができる。

造的乱談かどうかは、その場の笑いによってはかられる。知的笑いは小発見の前ぶれのようなもので、貴重である。専門家の研究発表は、笑いたくても笑うことができない。気のおけない小グループの談笑はときとして発見の前触れになる。笑いは知的爆発のあかしのようなもので、決して不真面目ではない。

⑭あえてゆっくり話す

イギリス人は、大声でしゃべると、知恵が飛んで行ってしまう、そういって、戦災復興の国会議事堂をあえて小さくして、わめかなくてもよいようにした、という。

大声ばかりでなく、早口もよろしくない。たくさんのことを言おうと思ったら、思い切って、ゆっくり話すと案外、たくさんのことが言える。

⑮ないものねだりに陥らない

よくわからないのに、外国のものには何か心をひかれる、おもしろい、と言う。しかし、実は、よくわからぬからこそ、心をひかれ、おもしろく感じるのである。こうした理解には、身勝手なもち込みの危険、ないものねだり的な批判の危険もまた大きいのである。