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2024年総括。心を落ち着けるダウンテンポ/アンビエント・ミュージック(感想)

夏はあんなに暑かったのに、冬になったら凍えるように寒い。
そんな寒さで体が縮こまってしまう時には、心を落ち着けられるチルアウトに浸ってみる。
以下、この1年以内にリリースされた、ダウンテンポ/アンビエント・ミュージックを中心に印象的だった作品の感想などを。

Shabason, Krgovich, Sage/Shabason, Krgovich, Sage

トロント、コロラド、バンクーバーを拠点に活動する3人によるアルバムは2024年4月にトロントのレーベルidée fixeからリリース。

最小限の音で構成された素朴な音楽は、囁くように歌う男性ヴォーカルを含む。音の数が少ないために音の隙間がたくさんあって、その間が心地よい。
ジャズのような即興性も感じられ、深遠でオーガニックな音色の組み合わせはジャンル的にアンビエント・ミュージックに括られると思う。
また、当たりの優しい男性ヴォーカルはErlend Øyeのソレに質感が似ている。
朝、起き抜けに聴いたら、二度寝してしまうほど穏やかな音楽。


Sylphine/Soporifera Antonina Nowacka

ポーランド人のアーティストAntonina Nowackaによる3枚目のアルバムは2024年7月のリリースで、レーベルはMondojから。

中東音楽で使用されるような楽器や、弦楽器のように歌われる女性ヴォーカルによって多様な文化の影響を感じられる。夢の世界にいるような想像上のサウンドスケープはエキゾチックな雰囲気を漂わせる。
音楽自体はシンプルだけど、神秘的な音の組み合わせは気がつくと意識がどこか遠くへ行ってしまう。


Harmônicos/Fabiano do Nascimento & Shin Sasakubo

ブラジリアン・ギタリストのFabiano do Nascimentoと秩父の音楽家・笹久保伸によるギターデュオ。2024年12月のリリースで東京のレーベル、ringsからリリース。

大磯SALOスタジオにてアコギ2本で録音されたとされ、互いに共鳴しているような音楽は素朴で美しい。
少し激しく弦を弾く曲から繊細な曲までギター2本でよくぞこれほど、と様々な表情を感じさせてくれる。
全体的には心地よいアンビエント・ミュージックとして聴けて、カバー写真のような寂寥感がある。
「Após a Tempestade」の優しいタッチは、心を解きほぐしてくれるかのよう。


Normal Sounds/Lia Kohl

シカゴのチェロ奏者Lia Kohlによるアルバムは、ポートランドのレーベルMoon Glyphから2024年8月のリリース。
冷蔵庫や、食料品店、車のクラクションなどのフィールドレコーディングを駆使した音はダビーなアンビエント・ミュージックに仕上がっている。

人工的な音を再構築していく手法は、Matthew Herbertを想起させるけど、チェロの音が重なることでゆったりとした気怠さと非現実的な空間が印象的。


Lynn Avery & Cole Pulice/Lynn Avery & Cole Pulice

ミネアポリスでユニットを組んで、その後西海岸へと写った二人組、Lynn Avery & Cole Puliceによるアルバム。こちらもレーベルはMoon Glyphからで2024年11月にリリース。

穏やかでゆったりとしたピアノとサックスの音色が特徴的な「Moonlight in an Empty Room」はアンビエント・ジャズで、カバー写真のようなポジティブな印象を与えてくれる。
電子音では出せないようなわずかな揺らぎが優しく包みこんでくれるような音楽。


Paris/Nils Frahm

Nils Frahmによるアルバムは2024年12月に、ベルリーンのレーベルLEITERからリリース。
パリのフィルハーモニーでレコーディングされたライヴ・アルバムとなる。Nils Frahmはニュー・クラシカルのジャンルで紹介されることもあって、聴こえる音は厳かで上品。
音量は控えめだから、何か音楽を聴きたいけど当たり障りのない感じのを聴きたいときに丁度いい。
Nils Frahmは2024年4月にもアルバム『Day』をリリースしており、こちらはピアノ・ソロのアンビエント・ミュージックになっている。

Reclamation Car Wash/Weird Deers

Tigers Against Crimeから2024年1月のリリースのアルバムは、電子音楽による寂寥感のあるアンビエント・ミュージック。

このユニットについて検索してもほとんど情報が出て来ないため、小規模なインディーズレーベルからのリリースと思われる。
少しこもった質感のソフトタッチなシンセサウンドが心地よくて、「Deluxe Wash」のように淡々としていながらも中毒性のある感じが好き。


The Bloody Lady/Claire Rousay

ロスを拠点に毎年コンスタントにリリースするClaire Rousayによるアルバムは、VIERNULVIER Recordsから2024年12月のリリース。
スロバキアのアニメーション作家Viktor Kubalが1980年に発表した映画「The Bloody Ladyl」をもとにしてつくった音楽とのこと。

Official Trailerを見るかぎりでは絵柄は牧歌的だけれども、スロバキアの貴族のEcsedi Báthory Erzsébet(バートリ・エルジェーベト)が数百人の少女や女性を殺害した容疑で告発されたという民話をもとにしたとある。
この貴族の女性は吸血鬼伝説のもとになったとのことで、音楽から深い哀しみを感じさせるのは、多くの無実の被害者たちへ寄り添っているからか。

Claire Rousayは2024年4月にもアルバム『sentiment』をリリースしており、こちらはヴォーカル入りのエレクトロニカとなっておりオススメ。
さらに6月にリミックス曲を編集した『sentiment remix』もリリースしている。


1年の振り返りと備忘を目的として、気に入ったアンビエント・ミュージックをまとめて5年目になるけど、似たような音楽なのに微妙な違いがあるものだなと、いつも発見があって楽しい。


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