【感想】スダリオ剛 vs 安保瑠輝也
BreakingDwon12のメインマッチ、スダリオ剛 vs 安保瑠輝也の試合、凄かったですね。
元K-1チャンピオンの安保選手が判定5-0で現役のRIZINヘビー級ファイターであるスダリオ選手に勝利しました。
安保選手が足技を多用して終始自分の距離で闘えていたことが勝因になったと思います。
前日計量ではスダリオ選手が125kg、安保選手が81kgとなっており、両者の体重差は44kgとなっていました。
トップ戦線にいるプロ格闘家同士がこの体重差で試合をするのは非常に危険ですが、安保選手のテクニックが凄すぎました。
本来この体重差だと怖くてなかなか手が出ないと思いますが、安保選手はスダリオ選手相手に臆せず攻撃を仕掛け、カーフキックやハイキックなどを効果的に当てて、本当に驚きました。
この2人の因縁は、安保選手が2023年のRIZINデビュー戦の会見で「MMA(総合格闘技)は寝技でゴロゴロ寝っ転がってつまらない」と発言し、それにスダリオ選手がSNSで噛みついたことが発端でした。
安保選手は後に「俺の発言が間違ってました」と訂正し、スダリオ選手と和解していたのですが、その後SNSのDMでお互いを罵倒したりして、最終的には遺恨が残っていました。
両選手ともお互いに戦いたがっていましたが、スダリオ選手はMMAを舞台にしている選手で、一方の安保選手はキックボクシングを主戦場にしている選手で、本来土俵が違います。
また、直近では70kg契約で試合している安保選手に対してスダリオ選手はヘビー級で試合しているなど、契約の問題も含めてさまざまな事情から実際に対戦するのは現実的ではないと思われていました。
ただ、スダリオ選手がキックルールでの試合を承諾したことと、安保選手がこの体重差での試合を承諾したこと、そして最終的にはRIZINの榊原信行CEOがゴーサインを出したことによってこの試合が実現しました。
およそ1年に渡って因縁が続いた両者だけあって、本当に緊張感のある良い試合でしたね。
【体重差のある試合について】
ちなみに、BreakingDwon12ではスダリオ vs 安保以外にも体重差のある試合が行われました。
第8試合で行われた殴られ屋ウルス vs 金田一孝介です。
前日計量ではウルス選手が135kg、金田一選手が95kgとなっており、2人の体重差はスダリオ vs 安保とほぼ同じ40kgとなっていました。
両者は体重差だけでなく身長差もあったため、ウルス選手の深い懐に対して金田一選手のパンチがなかなかヒットしませんでしたが、延長戦で金田一選手がウルス選手に果敢に攻撃を仕掛け、スピードと手数で上回った結果、延長判定5-0で金田一選手が勝利しました。
この試合は、金田一選手がウルス選手対策をしっかり立て、それを遂行したことが勝因になったと思います。
格闘技全体に目を向けても体重差のある試合は複数行われています。
例えば、2004年12月のK-1 WORLD GP 2004決勝トーナメント、準々決勝ではマイティ・モー vs ガオグライ・ゲーンノラシンという体重差53kgの試合が行われました。
ガオグライはムエタイで数々のタイトルを獲った選手で、一方のモーはラスベガスで行われたK-1世界最終予選を制している強豪です。
この試合では、体重差を武器に突進してくるモーに対してガオグライがカウンターの右ハイキックをヒットさせ、1RでKOするというとんでもないアップセットを起こしました。
小柄なガオグライが大柄なモーの攻撃をかわし、最後はジャンプしながら右ハイキックで一撃KOする姿はまさに映画『マトリックス』のようでした(ちなみに、ガオグライの異名は「マトリックス」)。
ガオクライはその後、身長218cm、体重160kgのチェ・ホンマンとも対戦しています。
両者の身長差は38cm、体重差は82kgであり、プロ格闘技の試合としてはとんでもない体格差でした。
異次元の体格差にも関わらず、ガオクライはハイキックをホンマンの顔面にヒットさせています(最終的に延長判定負け)。
ちなみに、このガオグライ vs ホンマン以上に体格差のある格闘技の試合もあります。
2003年12月に行われた須藤元気 vs バタービーンは体重差110kg(須藤元気の一本勝ち)
2004年12月に行われたホイス・グレイシー vs 曙は体重差140kg(ホイスの一本勝ち)
そして、1994年9月にUFCで行われたエマニュエル・ヤーブロー vs キース・ハックニーは体重差が190kgもあり、恐らくこれがメジャー格闘技団体で行われた最大の体重差マッチではないかと思います(ハックニーのKO勝ち)。
ただ、階級がしっかり整備されて以降の格闘技界では極端な体重差マッチは行われなくなっていきました。
そもそも、体重差のある試合の場合、大きい選手の方がルールに不慣れであったりテクニックや知識が不足していたりといった場合が多く、そういった点で小さい選手が大きい選手を倒すことも少なくありませんでした。
そのため、今回BreakingDwon12で行われたスダリオ vs 安保の試合は、ルールは安保選手の土俵ではありますがスダリオ選手もストライカーであり、そういう点においては非常に危険なマッチアップではありました。
【両選手の今後】
スダリオ選手は負けてしまいましたが、決して評価が落ちる内容ではなかったと思います。
スダリオ選手はヘビー級の選手ですが、今回の試合でもその片鱗が見えましたが打撃のキレとスピードが凄くて、とても相撲出身の選手とは思えない完成度です。
今後は、本来主戦場にしているMMAの舞台で活躍していって欲しいなと思います。
一方の安保選手ですが、立ち技の技術はやはり天下一品でしたね。
ただ、スダリオ選手と軽く接触して身体が吹っ飛ぶ場面があったので、やはり体重差のあるマッチメイクは危険です。
今後は自身の階級で最強を目指して活躍していって欲しいなと思います。
YouTubeにも動画を投稿したのでぜひご覧ください🙇